それでも、いっさい手を抜くことなく、練習に全力で取り組み続けました。朝は誰よりも早くクラブハウスに行き、一番最後に帰る。帰宅後はさらに約10キロのランニングをしていたそうです。
「自分の夢、W杯があったので、ぶれる必要はなかった」
「絶対、W杯に行くって決めていた。そうしたら、1日もサボれない」
芯の強さを感じる話です。
また、新著でも、こんな言葉を残しています。
「努力とは、いま現在の自分が決めるものではなく、未来の自分が決めるもの」
「我慢の時間はその最中は苦しく感じるもの。だけど続けていると、必ず明るい未来につながっていく。そのことを僕は知ってしまっている」
たゆまぬ鍛錬の成果が、大一番で実を結んだだけ。浅野選手はそんな風に捉えているようです。
ただ、その勝負強さには何か秘訣(ひけつ)があるのではないか。
オンラインイベントの視聴者からも、そういった質問が寄せられました。
浅野選手は公式戦前夜に緊張で眠れず、寝不足で試合に臨まざるを得ないこともあったと明かし、こう言います。
「普段通りの行動ができても、普段と行動が違っても、何も感じないこと、焦らないこと。何かができなかったからダメだ、などと考えないこと」
だから、試合へ向けてのルーティンなどは特に作っていないといいます。
「その状態の自分で、やれることに100%(の力)を注ぐ」
寝られないかもしれない。そんな自分をありのままに受け入れる。実際に寝不足で完璧なコンディションでなくても、ゴールを取れたこともあるそうです。
何かにすがるのではなく、現状を受け入れ、その中でどうベストを尽くすか。
結果を出す人の考え方が垣間見えてきました。こうした思考と行動を愚直に繰り返し、積み重ねたものの一端が結果として現れる。そんな感覚なのでしょう。
どうしても、派手な結果に目がいきがちです。でも、その裏にあるものこそ、浅野選手の歩みをよりドラマチックに彩るのだと思います。