記者サロンの収録に臨む浅野拓磨さんと藤木健記者(手前)=東京都中央区の朝日新聞社、小林正明撮影
記者サロンの収録に臨む浅野拓磨さんと藤木健記者(手前)=東京都中央区の朝日新聞社、小林正明撮影
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 2022年サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会で活躍したFW浅野拓磨選手の新刊『浅野拓磨 奇跡のゴールへの1638日』が、このほど出版されました。ヒーローとなった初戦のドイツ戦の決勝ゴールをはじめ、W杯の舞台裏について率直に書き記しています。6月末の朝日新聞のオンラインイベント「記者サロン 浅野拓磨が振り返るW杯『奇跡のゴールへの1638日』刊行秘話」で浅野選手と対談した、2013年から浅野選手を取材し続けている朝日新聞スポーツ部の藤木健記者に、これまでの取材を通じて知った浅野選手の素顔などについてご寄稿いただきました。

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 浅野選手との出会いは2013年にさかのぼります。当時、大阪でサッカーを主に取材していた私はこの年、サンフレッチェ広島の担当になりました。広島へ通う日々で、プロ1年目でまだ公式戦にほとんど絡めていなかった若手と、なんとなく言葉を交わしていたのが始まりです。

 そこから16年のリオデジャネイロ・オリンピック(五輪)をめざすチームで、常連選手と担当記者として合宿や遠征先で顔を合わせ、取材を重ねるようになりました。

 その縁は、日本代表でも続いてきました。

 浅野選手の魅力とは何か。

 取材してきた記者としての目線で見ると、発する言葉の独特さと、エピソードの豊富さでしょうか。

 浅野選手本人は「僕、思ってることを本当にそのまま言うことしかできないので」と語ります。「根本的に自分はカッコつけ。ただ、自分を大きく見せるのは格好悪くて、ウソになっちゃう。本当のことを、言葉を選んで、格好良く伝えたいとは意識している」

 普段は人懐っこく、同時にマイペースなところもあります。それがひとたびピッチに入ると、スピードと野性味で相手を脅かす。そして、ここ一番でゴールを決める。チームが苦しいとき、追い込まれたときほど、何かを起こす。22年11月23日、ワールドカップ(W杯)カタール大会のドイツ戦で日本を勝利に導いた決勝点が、そのひとつの証しです。

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