■社会問題の解決のためにサステイナビリティを学ぶ
法政大学大学院公共政策研究科は、2012年に公共政策に関わる研究科や専攻を改組して誕生した。修士課程だけでなく博士後期課程も含めた社会人教育に力を入れている。公共政策研究科長の高田雅之教授は設立の経緯をこう説明する。
「日本ではかつて公共政策の実務において、学問の専門性が十分に生かされない時期がありました。ところが環境問題をはじめ近年の多くの社会課題では、その解決のため学問に裏づけられた公共政策が求められています。そこで学問と実務をひとつのものとしてとらえる研究科としてスタートしました」
高田教授は、民間企業を経て公務員から国立環境研究所に出向したのをきっかけに学問的アプローチに興味を持ち、大学院に入ると51歳で博士号を取得した。リカレント教育で新たなキャリアへと歩み出した先駆けといえる。
2016年にはサステイナビリティ学専攻が設置された。やはり社会的な課題の解決を目指していると高田教授は言う。
「国連が持続可能な世界のための目標として掲げたSDGsが、今の社会の多様な課題を示しています。しかも環境の持続性と経済の持続性といった一見相反する課題を同時に解決していかなければなりません。それをどうすればいいかを突き詰めると、どんな社会の中で自分自身がどう生きるかを考えることにつながります」
すべての人がそれぞれの立場から、持続可能な社会に向けてできることがあるはずだと高田教授は話す。そうした思いを持つ人たちがこの公共政策研究科で学んでいる。学生は大半が社会人で、勤務先は官公庁から公益法人、NGO、自治体、シンクタンク、民間企業とさまざまだ。男性と女性が約半々で、修了者には70代の会社経営者もいた。
「社会人としての自分の経験を学問的に見直し、知らなかった世界を知ることで新しい扉が開かれ、そこから可能性がさらに広がります。そしてそれで終わりではなく、学んだことを仕事や社会活動へフィードバックするための行動につなげることに、社会人が再教育を受ける大きな意味があります」(高田教授)