
多種多様な生物を育み、水を蓄えて土砂災害を防ぎ、二酸化酸素まで吸収してくれる森林。その存在自体が、SDGsに大きく貢献している。戦後、木材の輸入自由化で急激に林業が衰退した日本では、手入れされずに放置された森林が多いが、人間が手間暇かけて管理しなければ、森林の恩恵を受けることはできなくなる。
いま、日本各地で森林を保全し、100年後、200年後まで続く林業をめざす若者や移住者が増えている。それを支援する自治体もある。発売されたばかりの『やるべきことがすぐわかる 今さら聞けないSDGsの超基本』では、20代で「木こり」に転職した千葉貴文さんに取材。山を育てる林業に魅せられ、宮城県鳴子温泉地域で「循環する林業」に取り組む千葉さんの一問一答を公開する。
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――なぜ林業に携わることになったのですか。
もともとうちは農家で山を持っていて、ひいおじいさんが山を管理していたんです。農家をやりながら山で椎茸の原木栽培をしていたそうです。昔は父親も手伝いで山の仕事をしていたという話を聞いているうちに、自分もひいおじいさんのように山の管理をしてみたいという気持ちが湧きました。
――数ある林業の会社や団体の中で、NPO法人しんりん(以下、しんりん)で木こりになることを選んだ理由を教えてください。
しんりんが、山を育てるような林業をしているからです。一般的な林業では効率を重視するために、「皆伐」といって山の木をすべて伐採します。この、林木を伐採する時期のことを「伐期」というのですが、ほとんどが樹齢50年程度、長くても樹齢80年から100年の間にはすべての林木を切って、リセットしてしいます。
丸裸になった山は大雨が降ると土砂災害の危険性も出てきますし、再び植林し直してから50年待たないと、森は育ちません。その間、林業者の収入は絶たれるので、生活費は補助金で賄うしかなくなるんです。補助金をたくさんもらうためには、いくつも山を持つ必要がありますし、効率よく作業するために、重機も大きくしなければなりません。ところが、大きな重機は森を傷めて、山を壊してしまう。そういった林業は森を汚すだけではなく、めぐりめぐって水を汚すことにもつながるんです。