大きな重機は使わない。切る木はもちろん、周囲にある木も傷つけないように切って倒す(撮影/益本省吾)
大きな重機は使わない。切る木はもちろん、周囲にある木も傷つけないように切って倒す(撮影/益本省吾)

 しんりんでは、皆伐はしません。過密になった樹木の一部を伐採する「間伐」という方法で、森を育てながら少しずつ木を切ります。間伐にすれば森が循環していくので、僕たちには「樹齢50年だから伐採する」というような伐期の概念がありません。そして、山を壊さないように最小限の大きさの機械を使い、状況に合わせて山で伐採した木材を馬で運ぶ「馬搬」をする林業を行っています。

 しんりんでは、SDGsが広まるずっと前から、こうした山にやさしい林業をしてきたそうです。僕も森を守り、山を育てる林業がしたいと思い、ここで木こりになることを決めました。

――森を守るために、私たちにできることはなんでしょうか。

 家を建てるときにどんな木を使うかということも大切だとは思いますが、それよりももっと大切なのは、“気持ち”です。僕もしんりんに入る前はまったく山に興味がなかったんです。でも、実際に山に入っていろいろなことを知り、意識が変わりました。

 山の木をすべて伐採してしまったら、森が育つのに50年の年月がかかるとわかれば、木を大事にしようと思うのではないでしょうか。まずは森や山に興味を持ち、木を大事にする気持ちを育んでもらうことが第一歩だと思っています。

――木こりの仕事のやりがいを教えてください。

 通常、木こりには自分たちが切った木が最終的にどうなるかということは見えません。伐採した木はそのまま原木市場に行って、どこかの誰かが買います。でも僕たちは自分たちの伐採した木がどんなふうに使われているかを知ることができます。

 伐採した木は、グループ会社に運ばれ、そこでまず製材されます。製造過程で廃棄される木の皮や木屑などは、また別のグループ会社に運ばれてペレットなどの燃料になります。最後に製材された木材はグループの会社が建築に使います。僕が住んでいるアパートも自分たちの切った木で建てられているんですよ。こうして自分たちの切った木が無駄なく使われている過程を近くで見ることができることに、大きなやりがいを感じています。

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山がとてもスッキリする