「胃がんの手術はリンパ節を広範囲に切除するのが特徴で、最低でも胃の3分の2を取ることが標準です。GISTではその部分だけを取る局所切除が標準なので、むしろ胃がんの手術より単純だと言えるでしょう。ただ10センチを超えるような大型のGISTでは、胃をかなり大きく取ったり、また胃の周りの臓器までGISTが食い込んでいるような場合には、それらの臓器を一緒に切除しなければならないケースもあるため、難度が高くなります」
小腸や大腸のGISTでも基本的にはできた場所を取る局所切除だが、肛門に近い直腸にできた場合には大腸がんの手術と同様、肛門や排便機能の温存を図る必要があり、難度が高い。
手術後は、再発のリスクが低いと判断されれば経過観察となり、定期的にCT検査を受けて再発の有無をチェックする。一方、再発のリスクが高いと判断された場合には、再発や転移を予防するための薬物治療をおこなう。
GISTの再発リスクは、腫瘍の大きさ、細胞の分裂能力、できた場所の三つを考慮して判断される。大きさが大きいほど、また細胞の分裂能力が高いほどリスクが高く、できた場所が胃以外のほうがリスクが高い。これをGISTのリスク分類といい、超低、低、中、高の4段階で判断される。高リスクの患者の再発率は40%程度とされている。
■新薬も含め4種類の薬剤を使用
GISTの薬物治療では、四つの薬剤が使用される。その中で第一選択として使用されるのが、分子標的薬のイマチニブ(グリベック)だ。
国立がん研究センター東病院総合内科長・腫瘍内科の内藤陽一医師は、次のように言う。
「イマチニブは、発見時に腫瘍が大きく手術ができない場合でも投与によって小さくなったり、大きさは変わらないものの安定した状態が2年以上続くことも多い効果の高い薬剤です。高リスクの人の術後の再発予防としてイマチニブを3年ほど服用します。それで再発しなければ治ったということになりますが、残念ながら再発や転移をしてしまった場合には、二つ目以降の薬剤を順に使用していくことになります」