※写真はイメージ(gettyimages)
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「ChatGPT(チャットGPT)」などの生成AIの活用する動きが各業界で広がり始めている。教育現場でも日々の授業に取り入れる大学も出てきた。チャットGPTのメリットをどう生かしているのか。AERA 2023年7月10日号の記事を紹介する。

【図】学生vs.ChatGPT 同じ英作文でもこんな違いが!

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 立命館大学ではこの4月から二つの学部で、チャットGPTによる英作文を活用した授業をしている。日本語の文章を、一つは「学生が自力で」、もう一つは旧来の機械翻訳サービスが、三つめはチャットGPTが英訳し、学生たちは「どれが自力で、どれがチャットGPTによるものか」を当てながら、その違いが意味するものを考えるという内容だ。

 授業を担当する山中司教授(応用言語学)はこう話す。

「チャットGPTによる英訳は、おしなべて精度が高く、学生が想像できないような高いレベルの英文が出力されてくる。その恩恵は享受すべきではないかと思っています」

 とはいえ、山中さんの狙いは別のところにもある。日本語の文章を学生、機械翻訳、チャットGPTがそれぞれ英訳した例が表だ。元の日本語は同じなのに、特にチャットGPTによるものは他と大きく異なることがわかる。山中さんはその「違い」から、学生たちが自分で、気づきや発見を得てほしいと考えているのだ。

「『どれがチャットGPTか当てる』といっても、実際にはすぐにわかる(笑)。機械翻訳よりもさらに『小難しい、高度な英訳』が出力されますから」

 学生が自力でやった英訳は簡単すぎるし、差は歴然ではある。でも逆に難しすぎて、自分と乖離したような英語でもある。自分で使いこなせないと、意味がない。その点では自力のメリットもあるのだという。

「『自分の英語は箸にも棒にもかからない。もうチャットGPTに全部依存しよう』となるわけでもない。使い分けが大事だと、ちゃんと学生は気づく。そこから、『これは僕の英語じゃないから、こういうふうに変えよう』などと、英語を『自分のもの』にしていく。この授業をやると学生はすごく喜びます」

 山中さんは、グループごとに英語でパネルディスカッションをする授業にもチャットGPTを導入している。これまでは、討論のテーマを決める段階で時間のかかることが多かったという。たとえば一人はスポーツに興味があり、他の二人は教育、エンターテインメントをやりたいとする。そこでチャットGPTに「この三つに共通するテーマはなに?」と投げてみると、「音楽と、人との関わり方」というテーマが提案されたという。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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