東京工業大学の外観
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「情報・データサイエンス系」の学部学科の設置が相次いでいる。今春は20大学近く、来春もほぼ同数の大学で新設の予定だ。そんな中、理工系学部入試に「女子枠」を設ける動きが盛んになっていて、とりわけ注目を集めるのが東京工業大だ。昨年11月の「女子枠」の導入発表から、賛否両論を巻き起こしている。その狙いはどこにあるのか。同大に直撃した。AERA 2023年6月5日号の記事から。

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 情報・データサイエンス系に限らず、理工系学部は女子学生の比率が少ないのが課題だ。このため、入試に「女子枠」を設ける動きも広がりつつある。

 話題を集めているのが東京工業大だ。24年度入試から総合型・学校推薦型選抜で143人の「女子枠」を順次導入していく方針を発表したのは昨年11月。その直後から賛否両論の反響があり、中にはこんな批判も。

「不平等だ」「逆差別ではないか」「大学のレベルが下がる」

 井村順一副学長は「批判も覚悟で突き進まないと間に合わないという危機感があります」と思いを吐露する。

「2050年には現在18歳の学生が45歳になります。私たちはその時点で、相応数の女性の研究者や技術者がイノベーションを創出していく環境をイメージしています。そう考えれば、できるだけ早い段階で取り組むのは必須なのです」

 東工大の学部段階の女性比率は約13%。女子枠設置で20%超を見込む。益一哉学長は「歯を食いしばってでも」方針を貫く姿勢を示す。背景には「同じような人間の集団では柔軟性、創造性が発揮されにくい」というイノベーションの本質にかかわる課題がある。イノベーション分野の研究では、多様性のあるチームの方が高い成果を上げることが知られている。

 だが、国内屈指の伝統を誇る東工大の情報・データサイエンス系学部である情報理工学院でも、女子学生の比率は学内平均よりも低いのが実情。増原英彦学院長は、国際会議で日本の女性研究者の少なさが際立つ現実を目の当たりにしてきた。

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