「このままだと海外から見た時、日本は女性にとって生きづらい国なんじゃないかと思われかねない。これから海外から研究者や学生をどんどん集めなければいけない時に大きなマイナスだと考えています」
24年度中の東京医科歯科大との統合を控え、ジェンダーギャップの是正とともにさらなる研究成果の社会実装も期待されている。「理学と工学の両方の視点から基礎をしっかり学び、高いレベルの知識や技術を体得できるのが東工大の強み」と増原学院長は言う。
ブームからベーシック
来春設置予定の熊本大情報融合学環も、定員60人のうち学校推薦型選抜15人中8人を女性限定とする「女子枠」を設ける。卒業後の進路である半導体関連企業を含む製造業の男女比が男性7割、女性3割であることも踏まえ、「人材を世に送り出す大学でもバランスを図っていくことが重要な責務」との考えだ。
今春創設された京都女子大データサイエンス学部には定員95人に対し、99人が入学した。
「毎年100人単位の女性の即戦力人材を送り出す意義は大きいと考えています」と栗原考次学部長。文理融合型の入試で、高校で私立文系コースだった人にも受験機会を提供した。その分、入学後のフォロー体制も充実している。習得レベルに合わせ、1年次は数学のクラスを三つに分類。教員の個別指導などを受けられる「データサイエンスカフェ」も設置した。京都女子大では、データサイエンスの基礎を学ぶ科目を今春から全学部で必修科目にした。栗原学部長は「あらゆる分野で活躍できる人材を育てたい」と意気込む。
年々増える情報・データサイエンス系学部。一過性のブームに終わる可能性はないのか。河合塾教育研究開発本部の近藤治主席研究員は言う。
「データサイエンスで学ぶ基礎的な部分は、社会生活を送る上でベーシックな教養に近づきつつあるように思います。関連する学部や学科の10~20年後は、さらに別の形に進化しているでしょう」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2023年6月5日号より抜粋