ビッグデータを高度に解析し、新たな価値創出につなぐ「データサイエンス」。人材不足を背景に、各大学で関連学部・学科の新設ラッシュが続く。AERA 2023年6月5日号の特集「変わる大学・高校」から。
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「データサイエンス」と名の付く学部の創設は2017年度の滋賀大学が最初。その後、「情報・データサイエンス系」の学部学科の設置が相次ぎ、今春は20大学近く、来春もほぼ同数の大学で新設が予定されている。
背景にはデジタル人材の需要増がある。河合塾の調べでは、22年度の私立の志願者数は17年度の1.5倍(約24万3千人)。倍率も20年度の4.9倍をピークに高止まりの傾向が続く。
入試形態は「理工系寄り」「社会科学系寄り」、そして両者を包含した「文理融合型」に大別される。「最近の新設で目立つのが文理融合型です」と話すのは、河合塾教育研究開発本部の近藤治主席研究員だ。
商品開発やPR、マーケティングなど様々な局面でデータサイエンスの知識やスキルが必要になり、文系理系の垣根を越えた素養が求められる。このため、入試段階で文理双方の受験生がそれぞれ異なる科目、点数配分で受験できるよう間口を広げる傾向がみられるという。
文理融合型入試の採用
来春新設予定の学部で注目されるのが、熊本大の情報融合学環だ。熊本県には世界最大手の台湾の半導体メーカー「TSMC」も進出。半導体分野の人材ニーズが高まる中、専門集団の輩出機関として期待が集まる。
同学環は「文系型」で受験する場合、個別学力検査の配点は数学(数I・数II・数A・数B)が200点、外国語が350点なのに対し、「理系型」は数学(数I・数II・数III・数A・数B)が300点、外国語が250点の配分となる。文系型は共通テストで理科を1科目または2科目で選択できる。
こうした文理融合型の入試を採用する理由について、同大大学院先端科学研究部の城本啓介教授は「グローバル人材とデータサイエンスに強い人材をセットで育成する目標」を挙げる。文系理系どちらの強みも生かしながら学内で融合し、相乗効果を図る狙いだ。