根底には「高校時代の文系理系のクラス分けで、将来働く企業や職種を限定されるべきではない」との認識がある。とはいえ、データサイエンスに数学は必須。高校で数IIIや物理・化学を履修していない学生には補習カリキュラムも用意している。
発想力や課題解決力
文部科学省はデジタルや脱炭素など成長分野の人材を育成する理工農系学部を増やす方針だ。そんな中、文系色が濃い大学の情報・データサイエンス系学部新設の動きが目立つ。その一つが学内初の理系学部として来春、情報数理学部を設置予定の明治学院大だ。
村田玲音学長は「文系学部のみで構成された大学が純増で理系学部を持つのは想像以上に大変でした」と振り返る。後押ししたのは社会のニーズだ。「文系の母屋からせり出す形ではなく、新たに理系の母屋を築きたい」と意気込む。目指すのは「社会の一歩先を行く学部」。情報数理学部は3年次からPBL(プロジェクト・ベースト・ラーニング)を導入。企業から講師を招き、グループで実社会の課題を研究テーマに取り組む。「これからのデータサイエンスは社会との接点が鍵」と捉え、発想力や課題解決力を磨く実践的トレーニングが「一歩先」につながるとの戦略に基づく。
AIやデータサイエンスは経済学、社会学、法学、心理学などとの連携も大事。この点、人文科学系の人材や研究の蓄積が同大の強みになるという。村田学長は「新たな技術を社会に適用していく時には倫理も重要。キリスト教の倫理教育が浸透している明治学院大の風土は生かせる」とアピールする。
私立では多様性や専門性重視の傾向も目立つ。来春設置の東洋大食環境科学部のフードデータサイエンス学科は「フードシステム学」と「データサイエンス」の文理融合の学びで食を取り巻く問題の解決に挑む。今春設置された順天堂大の健康データサイエンス学部は、医学・医療とスポーツに基づいた健康の視点から「ヘルスデータサイエンティスト」というスペシャリストを育成するという。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2023年6月5日号より抜粋