しかし私立大医学部の志願者数も、22年を底に、23年は増加した。共通テスト方式を中心に一人あたりの出願校数も増加しているという。また、模試時点ではあるが国公立大と同様、女子志望者も増加していた。
さて、女子の志願者は一体どこから流れてきているのか。
例えば男子の場合、それまで東大理系などに進学していた人たちが、00年代以降、国公立大医学部にシフトした背景がある。かつて東大合格者数で名をはせたラ・サール(鹿児島)がその好例だろう。愛光(愛媛)や青雲(長崎)など、特に地方の難関進学校を中心にみられる動きだ。
ところが女子の場合は、そもそも東大に進学する絶対数が少ない。
岩瀬氏は「これまで女子志望者が多かった薬学部、看護学部で女子の比率が下がり、代わりに医学部、歯学部などで上がる傾向がみられます。より難関の資格取得を目指す女子が増加しているようです」と話す。
女子の場合、かつては地方を中心に、短大ではなく4年制大学に行くことへの偏見が根強く、そのうえ理系に進学することがはばかられるとの見方があった。理系でも医療系や農学系は人気が高かったが、医学部となると、結婚などの将来を不安視する向きも珍しくなかったようだ。そのため、医学部に進学できるポテンシャルを持った女子でも、妥協して薬学部などに行かざるを得ない風潮もあったとみられる。
■来春の入試でも医学部人気続く
だが、近年ではこうした偏見は薄まりつつある。学力のある女子が希望する学部を受験しやすくなってきていることが、医学部人気が高まっている一因だという。
全体をみると、女子だけでなく、男子の医学部志願者も増えている。
岩瀬氏は「コロナ禍により社会格差が浮き彫りになった」と分析する。
医学部人気は景気や社会情勢に大きく左右される。23年入試に挑んだ現役の受験生は、高校3年間をコロナ禍で過ごした。連日の報道もあり、自分も医療従事者となって、社会の役に立ちたいという人が少なくなかったのだろうか。