■頑張った人に虹色のチケット 希望部署へ異動
富山支店長へ出る前の2000年7月、人事課長になった。ここでも「諦めずに貫く」があった。名古屋で主任になって以来、部下の評価では「頑張った人を推す」を続けた。人事課長として軸に置いたのも「頑張った人に報いる」だ。でも、望む部署へいかせたいと思っても、定員に空きがなく、なかなか希望に沿えない。道を探していたら、ふと、案が浮かぶ。
「希望先に空きがなくても、異動させてしまおう。定員超過分は、次の人事の際に解消すればいい。社員数の多い会社だ、それくらいは包み込めるだろう」
部長や担当役員、社長まで、「面白い、やってみろ」と言ってくれた。早速、営業担当役員から推薦された「頑張った」15人を、希望の部署へ送る。付けた制度名が「ドリームチケット」。実際に虹色のチケットをつくり、役員が本人へ渡す。社員たちが先々に「夢」を持てるように、との思いだった。03年夏に始め、いまも続いている。
2015年4月、持ち株会社と事業会社の副社長執行役員となり、半年後に持ち株会社の新規事業開発部長も兼務した。人口減に伴う契約の伸び悩み、若者の車離れ、想像を超える自然災害の続発など、損保事業の成長性はみえにくくなっていた。
何か潜在需要の大きい新規事業へ乗り出したいと思い、部の全員を集め、どんな新規事業を考えているのか聞いた。そのなかで興味を持ったのが、介護事業だ。やはり「世のため人のため」になる事業を、と頷く。
社内の多くが「難しい」と反対したが、押し切った。いま運営する高齢者施設は200カ所を超え、介護サービス付きマンションも約50棟。デイホームや在宅サービスもやって利用者は8万人近く。もちろん、介護に携わる3万人の処遇も大事。当初は看護師の6割くらいだった介護を担当する職員らの平均年収は、もう少しで看護師と並ぶ。
16年4月に事業会社の社長になっても、22年4月に会長になってからも、介護事業に力を注ぐ。「決めたことは貫く」という『源流』からの流れは、止まらない。(ジャーナリスト・街風隆雄)
※AERA 2023年5月22日号
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