夏の甲子園出場がかかった地方大会決勝は、ひとつの采配やプレー、ミスが明暗を分けることもある。過去の決勝戦の中から、“甲子園切符”に大きく影響を及ぼした3つの珍事を紹介する。
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決着がつくまでに延長21回を要したばかりでなく、“幻のサヨナラ勝ち”まであったのが、1956年の北関東大会決勝、足利工vs藤岡だ。
どちらが勝っても甲子園初出場という隣県同士のライバル対決は、4回に無死満塁のチャンスをつくった藤岡が、内野ゴロの本塁送球を捕手がエラーしたのに乗じて1点を先制した。
準決勝までの2試合をいずれも1対0で勝ち上がってきた藤岡は、この日もエース・石井偉男がカーブやドロップを駆使し、8回まで無失点に抑えたが、1対0で勝利目前の9回1死から追いつかれ、延長戦にもつれ込んだ。
そして15回、藤岡は2死満塁から中前タイムリーが飛び出し、2対1でサヨナラ勝ちと思われた。
ところが、一塁走者が喜びのあまり、二塁ベースを踏むのを忘れ、ホームインした三塁走者に駆け寄って抱きついたことから、外野から返球を受けた足利工の二塁手・小川晃がベースを踏んでアピール。この結果、一塁走者は二封アウトになり、ルール上、サヨナラの得点も認められず、藤岡の勝利は幻と消えた……。
試合は1対1のまま延長21回まで進み、この回、足利工は遊ゴロエラーの走者を置いて、5番・小林政夫が左越えに決勝二塁打。あわやサヨナラ負けのピンチを乗り越え、甲子園初出場をはたした。
一方、一塁走者が二塁ベースを踏んでいれば、甲子園に出場していたはずの藤岡は、その後、2度とチャンスがないまま、2007年限りで閉校となった。
ちなみに藤岡は、90年の群馬大会でも、同点の9回裏に3番打者が公式戦初アーチとなるサヨナラ満塁本塁打を放ちながら、一塁走者を追い越した結果、サヨナラ弾が幻と消えている。
試合前に一人の部員がグラウンドで夏の甲子園の大会歌「栄冠は君に輝く」を熱唱する珍パフォーマンスが演じられたのが、80年の山梨大会決勝、日川vs甲府西だ。