ヒメマルカツオブシムシ成虫(写真提供=アース製薬)
ヒメマルカツオブシムシ成虫(写真提供=アース製薬)

 わが家の布団カバーは白色の部分が大きい。洗濯して、外に干した時にくっついてきたのかもしれない。

 成虫自体は、人を刺すなど直接的な害はない。

 ただ、人にとってはとても厄介な行動を取る。部屋に入った成虫は、衣類などに80~90個ほどの卵を産むことがあるのだ。

「卵は乳白色で小さいため見つけるのは困難で、衣類に産みつけられても気づきにくいんです」(担当者)

 ここからが、さらに厄介になる。

 卵は約10~25日ほどで孵化して幼虫になる。誕生おめでとう。

 幼虫の好物は、名前の由来となっているカツオブシや煮干しなどの乾いた食べ物。そして、衣類やじゅうたんなどの繊維類も大好きだ。なにが美味しいのかは知らないが、幼虫たちは服や繊維類を食べ続け、脱皮を繰り返しながら成長し、たくましいことにそのまま冬を越すのだという。

 幼虫の期間は約8~10ヶ月と長く、4~5ミリほどの大きさになる。

 押し入れにしまっていた古いベージュのTシャツに小さな穴が開いていたが、劣化ではなく食害だったのかもしれない。

 そして、4月中旬~6月ごろに成虫になる。よくぞ大きくなりました。

 ここで、そのまま外へと元気に飛んで行ってくれれば良いのだが、卵を室内の衣類などに生み残してから、旅立っていく個体もいる。

 卵からかえり、幼虫になって衣類などを食べ冬を越し……。しっかり対策を施さなければ、この恐ろしい「ループ」が繰り返されて完全な同居者になってしまう。お気に入りの衣類に毎年、穴が開く事態にもなりかねない。

 そろそろ、夏物の衣類をしまう時期がやってくる。

 担当者は、対策をこうアドバイスする。

「衣類をしまうときは、必ず洗濯やクリーニング、ブラシかけなどで清潔にしてください。タンスやクローゼットに衣類用防虫剤を使用することもおすすめです。その際には薬剤の効果が全体に行き渡るよう、衣類をつめすぎないようにします。衣類から出る綿ぼこりもエサとなるため、部屋をこまめに掃除することを心がけてください」

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成虫を家に入れないことが重要