SIJは子どもたちの教育だけでなく、参加しているハーバード生たちに日本文化を体験してもらうことも目指しているという。
「コロナ以前は毎年、小中高生が100人ほど、ハーバード生が10人ほど参加してくれました。実は、日本に来てみたいという学生はたくさんいます。ハーバードの寮や学生団体のメーリングリストで募集すると、かなりの応募が来るので、こちらで書類選考と面接をするのが大変なほど。アメリカの大学生は、インターンの経験などでレジュメをいかに充実させるかが大事で、夏休みの3カ月は彼らを募集するのにぴったりの時期。SIJに参加すれば、『大分という場所で、日本の子どもたちへの2週間の教育プログラムに参加した』と履歴書に書けますから。ハーバード生にとってSIJの経験は、グローバルな面でもビジネスの面でもいいアピールポイントになるのではと思います。
開催時期にも理由があります。SIJを開催する8月上旬は大分が一年でいちばん賑やかになる時期です。「大分七夕祭り」といって、山車が出たり花火が打ち上がったりと、大分がおまつり一色になるので、SIJに参加したハーバード生には日本の夏祭りを体験してもらいます。浴衣を着るとみんな大喜びで写真を撮ったり、踊ったりしていますよ(笑)」
■クラシックの間口を広げたい
忙しい合間を縫って、テレビにも出演している廣津留さん。音楽活動にも相乗効果を生んでいるという。
「朝の情報番組のコメンテーターとしてテレビに出るようになったことで、地方のコンサートに行くと『見てるよ!』と声をかけてくださる方が増えました。生のバイオリンを聴くのは初めてという方もたくさんいらっしゃいますし、私をきっかけにコンサートに足を運んでくださる方が増えているとしたら、とてもうれしいですね。
テレビでコメントをするときは、短い時間で自分の意見をわかりやすく伝える必要があり、この経験はステージから客席に話しかけるような場面でも役立っています。おしゃべりを交えながら曲の紹介をするほうがお客様も聴きやすいと思うので、コンサートでは双方向の関係を大事にしたいと考えています」