元気がでる介護研究所代表の高口光子さんは次のように話します。

「介護生活をどこで送るかを考えるとき、ほとんどの人がまず、介護保険制度の内容や経済的な問題、家族の負担などを心配されます。しかし最初に考えるべきは、『自分は誰に介護されたいか』ということです」

■新しい人間関係を築く決意が必要になる

 そもそも介護される状態になった自分を想像することは、難しいものです。立つ・歩くなどの基本動作や着替え、食事を手伝ってもらう、さらにはおむつを替えてもらう、認知症になれば、徘徊や暴力行為などの問題行動を起こす可能性もあります。

 そうなった自分を、子どもやそのパートナーなどの家族にさらけだして世話を受ける覚悟があるなら、自宅での介護生活を選んでいいでしょう。逆に、家族には老いていく自分を24時間見せるのはつらい、いっそ他人の介護のプロにみてもらうほうがいい、と思うなら、高齢者ホームへの入居を考えるべきです。

 高口さんは、「いずれの場合も、介護生活の始まりは、新しい人間関係の始まりでもある」と言います。高齢者ホームに入居する場合は、それまで知らなかった介護のプロとの新しい付き合いが始まります。自宅での介護生活では、まわりにいる人の顔ぶれはあまり変わりません。しかし要介護になった自分は世話・保護される立場になり、家族との関係はこれまでどおりではなくなり、新しい関係を築くことになります。

週刊朝日ムック『早めの住み替えを考える高齢者ホーム2023』より
週刊朝日ムック『早めの住み替えを考える高齢者ホーム2023』より

「自宅でも高齢者ホームでも、お互い気持ちのよい介護生活を送るには、よい関係を築くことが不可欠です。まずこの点を熟考・選択して、そのあとで、受けられるサービスや家族のかかわり方など、具体的な項目を一つひとつクリアしていく、そうすることではじめて、自分らしい介護生活の実現が可能になるのではないでしょうか」(高口さん)

 介護生活がいつ必要になるかは誰にもわかりません。だからこそ、元気なうちに「自宅か高齢者ホームか」を考えて、家族と話し合っておきたいものです。

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高齢者ホームへの入居が終のすみかではない