■心身の変化に合わせて転ホームを考える

 高齢者ホームへの入居について、多くの人は「ここを終のすみかとする」というある種の覚悟をもって臨むようです。とくに要介護となり、子どもに勧められてホーム入居を決めた場合には、その思いは強いのではないでしょうか。家族も「最期まで世話してもらえるところが見つかってよかった」と安堵して、ゴールと考えることが多いようです。

 しかし、「高齢者ホームにはそれぞれに特徴・得意な分野があります。目的に合わせてホームを引っ越す『転ホーム』も視野に入れるべき」と、ASFON TRUST NETWORK常務取締役の小嶋勝利さんは言います。

 高齢者ホームは、「アクティブな毎日をお手伝い」「認知症のケアならお任せください」「胃ろうがあっても入居できます」など、施設ごとにアピールポイントをもっています。ホーム選びではそれを決め手とすることも多いでしょう。

「ホームでの生活は2年、3年と続きます。その間に心身の状態は変化していくと考えたほうがいいでしょう。それなのに同じホームで同じサービスを受け続けていていいのでしょうか」(小嶋さん)

 小嶋さんは以下のようなケースが考えられるといいます。

週刊朝日ムック『早めの住み替えを考える高齢者ホーム2023』より
週刊朝日ムック『早めの住み替えを考える高齢者ホーム2023』より

(1)に該当するのは、現在では「サ高住」とよばれるホームです。(1)から(2)への転ホームは、たとえば同じ系列の認知症を得意とするホームへの転居を提案されるなどの形で、比較的おこなわれているようです。しかし(2)から(3)、(3)から(4)への転ホームを実施するケースはほとんどないといっていいそうです。

「たとえば認知症の問題行動の多くは、数カ月から数年でおさまり、徐々にADL(日常生活動作:歩行、食事、入浴、排泄などの必要最低限の動作)が低下してきます。その際にADLの維持・増進を得意とするホームに引っ越さないと、必要なサービスをじゅうぶんに受けずに毎日を送ることになります」(小嶋さん)

 気になるのは、転居のたびに入居一時金が必要になり、経済的な負担が大きくなることです。

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転ホームを実現するには、ホームの特徴を見極めて