記者がMidjourneyで生成した渋谷の風景。「キュビズム風のスクランブルスクエア」
記者がMidjourneyで生成した渋谷の風景。「キュビズム風のスクランブルスクエア」

 また、9月に台風15号の影響で、静岡県に大きな被害が出た。その際、氾濫した川の水で街が水没しているような写真がツイッター上で拡散されたが、「Stable Diffusion」で作ったフェイク画像だった。

■「AIで描いてほしい」

 著作権の問題もある。たとえば、10月に提供を開始した「NovelAI Diffusion」は、二次元のキャラクターが高性能で生成できると話題になったが、無断転載された著作権のある作品が機械学習に利用されている可能性が指摘され、議論が起きた。

 急激な進化だからこそ、これから世界で議論すべき問題も次々と出てきている。しかし、すでに画像生成AIは作家のツールの一つとして作品作りに活用されつつある。

 冒頭の852話さんの元には、「AIで描いてほしい」という仕事の依頼も多く、実際にミュージックビデオなどをAIで手がけた。

「どんな絵が出てくるのか生成されるまで分からないので、ワクワク感もありますし、指示通りに出てきたうれしさもあります。期待通りではなくても『こんなのが出てきた』という発見だったり、じゃあこうやって作ろうかな、と思えたり。想像を超えたものが出てくる面白さはAIならではと思います」

 これまでのツールとは違い、AIの場合は線画や面がレイヤーに分かれていないことで作業がしづらかったり、クライアントが希望する絵がなかなか出せなかったりという苦労もあるが、いずれそこも改善されると考えている。

■結局は人間的なもの

 写真家の小山幸佑さん(34)は、87歳の祖母と祖母の記憶をテーマにした個展を11月に開いた。その中で祖母の戦争体験をAIを使って表現した。

「AIの画像って、ちょっとおかしな画像が生成されることも多いんです。そこを利用したいと思いました。誰かの体験や記憶というのはそのまま100%同じようには伝わらずに、少しずつ形を変えて伝わっていきますよね。そのずれや、伝達の変遷というのも込みでビジュアル化しようと考えたとき、AIなら表現できるかもしれないと思いました」

 小山さんは祖母が語った戦争体験をAIに打ち込み、画像を200枚ほど生成。そのうち、あえておかしい絵を50枚ほど選び、一つの作品に仕上げた。作品を見た人たちは「なんか不思議」には思っても、初見でAIだと気づく人はほとんどいなかったそうだ。

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