もう一つは、登山を中止したときの代替計画を用意しておくこと。たとえば風が強いときは登山はやめて手前のゲレンデでスキーをする。雨も降ってきたら周辺の温泉めぐりをする。不安な要素が1つあったらここまで、二つあったらここまでというように、段階的な選択肢を準備しておき、出かけること自体は中止しない。そうすれば、家でぼーっとしていることはなく、無謀な突撃をせずに済むという。
「山の天候も自分の体調もいつも良いわけではありません。準備に加え、登山中は気象情報や自分のからだが発するメッセージをしっかりとキャッチし、『条件が悪くなってもここまでなら耐えられる』あるいは『今回は手前で諦めて次の目標として残す』というように賢明な判断をして、長く山登りを楽しんでいただければと思います」
(文・熊谷わこ)
【プロフィル】
齋藤繁(さいとうしげる)/群馬大学医学部附属病院・病院長。健康登山塾・塾長。日本登山医学会、日本山岳会、日本山岳・スポーツクライミング協会の各種委員を歴任。『病気に負けない健康登山』(山と溪谷社)などの著書がある。