「とくに登り始めのワンピッチは速くなりやすい。最初に頑張りすぎていきなり心筋梗塞を起こすのは、山の突然死の典型例と言っていいでしょう。中高年は、動脈硬化で血管が詰まったり、破れたりしやすくなり、血圧が高めなど悪い条件が加わっていることが多いので、より注意が必要です」(齋藤医師)
■心拍数と体感で最適なペースを探る
ではどの程度の歩行ペースが適切なのか。齋藤医師は、心拍数を目安に登ることを勧めている。無理なく歩き続けることができる目安は、年齢ごとの最高心拍数(220-年齢)の6~7割。60歳なら(220-60)×0.6~0.7で、だいたい100~120になる。
「心拍数が表示される腕時計を利用したり、手首で心拍数を測りながら、100~120を保つペースで歩いてみてください」
ただしこれはあくまでも平均的な数字。心拍数は同じ年齢でも個人差があるため、このペースで登ってみたらきつすぎて無理だと思う人もいれば、物足りなく感じる人もいる。そんなときは、「自分が感じるきつさ」が参考になる。
「歩行ペースと体感的なきつさは相関していて、速く歩けばきつく感じるし、遅ければ楽に感じますよね。『ちょっときついけど、がんばれば行ける』くらいが、その人に合ったペースです。裏山などをこのペースで歩いたときの心拍数を確認しておき、心拍計を見ながらその数値を超えないように歩けば、負荷がかかりすぎることはありません。設定した心拍数を超えるとアラームで知らせてくれる機能がついた時計も市販されているので、活用するといいでしょう」
■便利な機器を使い、からだの変化を数値で見える化
心拍数や血圧といった目に見える客観的な数値は、登山時のからだの状態を知ることができ、ペースだけでなく体調管理をする上でも役に立つ。コロナ禍で多くの家庭に普及したパルスオキシメーター(動脈血酸素飽和度を計測する機器)も活用できるという。