「あの人だったら、こんなとき、なんて言うだろう?」と自分がその人になったつもりで考えてみる。お手本にする人の価値観やスタイルの中に一時的にでも自分を置いてみる。
これまでの自分の理想や「あるべき」の箱から意識的に出てみると、新鮮な一言、新しい発想のきっかけにもなります。
さらに、自分が話している最中に一瞬相手に憑依して、聞き手になってみるという方法も。想像上でぐるっと相手と入れ替わって、相手の立場に立って自分自身をチェックするという感覚です。
相手の表情や目線、返事などを観察しながら、「私のこの話、ちょっと長いかな? そろそろ切り上げようかな。例えは具体的でわかりやすいかな。楽しめているかな?」など。
「よい印象を与えたい」と自分だけに集中するのではなく、目指すは、自分以外の考え方や価値観にも目を向けられるバランス感覚。そんな人は、「なぜか、一緒にいると居心地いいなぁ」という雰囲気をまとっているもの。加えて、「あの人は話がわかりやすい」「意思疎通ができる」「言わんとすることがちゃんと伝わる」という印象にもつながります。
さあ、ちょっと試しに、家族でも、友人でも同僚でも、一瞬だけその人に憑依するような気持ちで会話をしてみてください。自分とまったくタイプの違う人に対してもワンクッションが生まれ、「へー、そうなんだ」「それもありかもね」「まあ自分は違うけどね」「無理に押し付けたりしないけどね」と違いを認め、イライラせずに接することができますよ。
人生も事情も、人それぞれ。一瞬でも誰かに憑依してみることで、自分が考えていた正解の範囲って結構狭いものだったな、と気づけるようになります。こういう経験をどれだけ持てるかが、人としての器の大きさにつながってくると思うんですよね。
【ここまで聴いてくれたあなたへ】
憑依すれば、物事が広く見えてくる。
(構成/小川由希子)