リスナーからの投稿を一人芝居仕立てにしたり、よき兄貴、頼れる人生の先輩として体験談を話してくれたり、男心もわかる女性「雅子」に憑依して雅子特有の言葉遣いでお悩み相談に乗ったり。
「あの福山さんが、そんなキャラに!」というサプライズとともに、向こうからこちらにぐぐっと近づいてくれたような感覚になります。それは日本を代表する俳優としての想像力・表現力・人間力があってこそ。贅沢で粋な番組だなぁと思います。
■相手の感覚を借りてくる気持ちで
私がラジオで大切にしているのは、リスナーに対して「この人はどんな場所で、何をしながら聞いてくれて、どんな気持ちで反応してくれたのかな?」と想像を巡らせること。その人の“視線”の先にどんな世界が広がっているのだろう、と。福山さんのように「憑依」とまではいかなくとも、その人と自分を重ねて距離を縮めていくことにつながります。
例えば、春、リスナーから、「今日、引っ越しします。モノを整理して、荷造りしていたら、気持ちも整理されました」といったメールをいただいたとき。私も想像の世界で、段ボールだらけの部屋へびゅーんとワープしてみます。
「ここにポスターの跡がある」「この床の傷は、あのときの……」などと、自分もその部屋の主になったつもりで、がらーんとした部屋を見回してみるというイメージです。
このように相手の状況、その目に見えているのかなという景色、耳に入ってくるのかなという音など、できる限りの想像を働かせ、重ねてみることで、言葉が自然と湧いてきます。「この部屋でいろんなことがあったな……なんて、最後にちょっと感傷的になってしまうんですよねえ」というつぶやきのような感想が共感を呼ぶこともあります。
もちろん、あくまで「私が想像した相手の気持ち」であることは忘れず、決めつけないことも大切です。
■憧れのあの人なら、どうする?
「憑依」といえば、尊敬する人の視線を“想像上で”借りてみるという方法も。