イガイガする喉(のど)の違和感や鼻づまりが取れない、首や肩がこる、頭が痛い、なんとなくだるくて体調が悪い。病院に行って薬を飲んでも良くならないし、いろいろな検査をしてもどこにも異常がないと言われる。こんな経験がある人は多いのではないだろうか。もしかしたら、それは慢性上咽頭炎かもしれない。
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■上咽頭は免疫の最前線
上咽頭とは、口蓋垂(こうがいすい、のどちんこ)のちょうど裏側の上あたり、鼻の奥へとつながる部分のことを言う。左右の鼻の穴から吸った空気が一つに合流し、方向を変えて肺へと向かう通り道になっている(図)。
上咽頭の表面はごく細い毛が生えた細胞(繊毛上皮細胞)で覆われており、空気とともに侵入してきた細菌やウイルスなどの異物が付着しやすい。堀田 修クリニック院長で日本病巣疾患研究会理事長の堀田修医師は、次のように話す。
「上咽頭には免疫細胞がたくさんあって、細菌やウイルスが侵入しないように見張る門番の役割を担っています。いわば、免疫防御の最前線です。ウイルスなどが侵入してくると免疫細胞は戦闘態勢になって活性化し、炎症を起こします。すると上咽頭の粘膜の下に炎症によるうっ血が起き、頭痛や喉の痛み、肩こり、首こりなどさまざまな症状を引き起こします。この状態を急性上咽頭炎と言い、最も代表的なものの一つはカゼですね」
■自律神経や免疫に関連する症状も
急性上咽頭炎はウイルスが退治されれば治まるが、ウイルスがいなくなっても炎症やうっ血が残り、空気とともに常時侵入してくる異物に対し上咽頭が敏感に反応して、炎症やうっ血が続いてしまうことがある。それが慢性上咽頭炎だ。
「上咽頭の炎症やうっ血による直接的な症状のほか、免疫細胞が作り出す炎症物質(サイトカイン)が血流に乗って全身に行くことで、自律神経の乱れや免疫が関連したさまざまな症状、関節炎など元々ある病気の悪化が慢性的に起きてきます。それが慢性上咽頭炎によって全身の不調が生じるメカニズムです」(堀田医師)