10月20日に上皇后美智子さまが88歳の米寿を迎えた。上皇さまとおふたりそろっての米寿を記念した記念メダルも発売され、この日には4年ぶりに祝賀行事も行われた。
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「あなたと結婚できて、自分は本当に幸せだった」
2019年4月30日に明仁天皇は退位し上皇となった。その頃、上皇さまは美智子さまに、穏やかにそう語りかけた。
上皇さまの言葉は、こう続いた。
「あなたもそう思ってくれているといいのだけど」
妻への愛情と敬慕に満ちた言葉。上皇さまは毎晩のように美智子さまへ、そう語りかけていたと話すのは、絵本編集者の末盛千枝子さんだ。美智子さまとは20年を超える深い親交がある。この日、末盛さんは美智子さまと電話で話をしていた。美智子さまは、やや真剣ともとれる様子で末盛さんへ問いかけられた。
「おかしいかしら」
すると、末盛さんは、思わずにっこりして答えた。
「私たちの間でしたら、それは、『ごちそうさま』という感じですよ」
園児がご夫妻に贈った種
この春におふたりは、元赤坂の仙洞御所に戻った。結婚から33年間を過ごした思い出深い「東宮御所」を改修した建物だ。
生活は日々穏やかだ。
朝夕おふたりで庭を散策し、朝食後の音読を続けている。音読は東宮時代からの習慣で寺田寅彦の「柿の種」、中谷宇吉郎の作品の他、上皇さまが初等科時代に使った国語の教科書を使うこともある。
仮御所があった高輪の保育園児から贈られた「ふうせんかずら」の種を大切に育てているという。種を贈ったのは愛星保育園。村岡恵美子園長によれば、ふうせんかずらの種は、年長の子どもたちが毎年夏前に種をまき、秋には種をとって次の園児につないできたもの。代々の園児が30年近く大切に受け継いできたものだ。引っ越し前に女官を通じて上皇ご夫妻に渡したのだという。
「まさか本当に育てていただけるとは思わず、子どもたちも喜びます。元赤坂の御所でも子どもたちの顔を思い出していただけたら嬉しい」(村岡園長)