だいたい、一昨年に自民党の「フェムテック振興議員連盟」が立ち上がったのは衝撃だった。保守系の議員らが積極的にフェムテックを推進している国など、他にあるだろうか。フェムテック議連の顔でもある野田聖子さんは「(女性のためなどという)きれい事はいいのよ。需要を作る、経済としてフェムテックに関わりたい」と過去のインタビューに答えているが、実際、今、経済産業省ではフェムテックに参入する新規事業への手厚い補助が行われはじめている。低迷する日本経済のブーストのように、フェムテック産業を捉えているのだろう。
「フェムテック トーキョー」にゲストとして招かれていたホリエモンさんも、経営者が女性の生理のことを理解し、サポート態勢を取れば良い人材も増えるし、結果的に企業は儲かる!と語り、政治や経済のジェンダー不平等は、男性が女性の生理や体の不調を理解すればほぼ解決する、とも話していた。
なるほど、と思う。こういう調子ならば、日本でフェムテックが異常に熱い空気になっているのも、なんとなくわかる。私自身、フェムテック議連が立ち上がる際、協力企業のヒアリングに呼ばれたことがあるのだけれど、そのとき、フェムテック起業家の女性たちから「人権とか、感情的なことは自民党の議員に言っても通じないので、経済の話としてフェムテックを語ってほしい」と言われた。人権って感情なのか……と驚いたけれど、「儲かりますよ!」と言えば、政治と社会が動く、それが今の日本なのだろう。
それにしても、「フェムテック トーキョー」に登壇したホリエモンさんの話にも、野田聖子さんの話にも、モヤモヤが募った。
ホリエモンさんは産婦人科専門医との対談だったが、生理中の不調も、婦人科系の疾患も全て「国家の経済的損失」として数値化されていた。さらに生理中は女性のパフォーマンスが半分落ちると、対談の中では言いきられていた。半分……って、いくらなんでも言いすぎよ。人によって生理の重さは違う。だいたい生理がはじまったばかりの10代は激しく重く、周期が不安定なことも多いが、成人するにつれて安定していくことも多い。生理中より、排卵日のPMSのほうがイライラが募ったりなど厳しく、むしろ生理中はそのイライラから解放される兆しのように感じる女性もいる。というより、生理で仕事に集中できなくなるよりも、通勤電車で痴漢にあった日のほうがパフォーマンスゼロレベルに落ちるのが、女のリアルだろう。というか、そもそも人間を「パフォーマンス力」でしか測れないような経営者目線こそが、人間の働く環境ではない。