また「フェムテック トーキョー」の基調講演で野田聖子さんは、「子どもを産みたいという女性の自己実現をサポートしたい」という話をしていた。国が推奨するフェムテックには、生殖医療技術も含まれ、今後代理出産の法整備も進む可能性があるといわれている。裕福な女性による、貧困女性の体の搾取ともいわれる代理出産をはじめとする生殖医療技術は、「女性の自己実現」として単純に肯定すべきことなのだろうか。というか、そもそも「子どもを産みたい」というのは、女性の自己実現なのだろうか。
女性の体を巡るリアルは、差別と暴力と葛藤と矛盾に日々振り回されている。そういうなか、「儲かりますよ!」「選択肢が増えますよ!」「パフォーマンスが上がりますよ!」という経済的な用語でフェムテック市場は盛り上がっている。ジェンダー平等がこれほど遅れている日本で、本来ならばジェンダー平等の象徴であるフェムテックが盛り上がるという不思議現象が起きているのはなぜだろう。それはまるで、女よ、輝け、効率的に輝け、そして金と子どもをもっと産め!と言われているようなものだ。
そうではなく、そんなフェムテックではなく……。私たちが本当に求める、女性のためのテクノロジーとはなんなのか。様々な国の女性たちがつくる「フェムテック商材」を狭いブースの中でたくさんの人に紹介しながら、男性を奮起させるための経済用語に聞こえる「フェムテック」が、この社会でどんな世界の扉を開いたのか、しっかり見つめていかなければという思いになる。