※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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世界的に増加の一途をたどっている近視。子どもの近視も急増している。子どもの近視は将来、目の病気にかかるリスクを高めることなどから、近視の進行を抑制する対策について、世界中で研究が進んでいる。

【データ】「子どもの近視」患者数は?かかりやすい年代は?

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 子どもの近視が大きな問題となっている。文部科学省の「令和3年度学校保健統計調査」によると、裸眼視力1・0未満の小学生は約37%、中学生は約60%。統計を取り始めた1979年は、小学生約18%、中学生約35%で、急増していることがわかる。2021年からは「児童生徒の近視実態調査」がスタートし、視力だけではなく、近視の程度を示す「眼軸長」(眼球の前後の長さ)の調査が実施されている。

 眼球はカメラのような構造になっていて、各部位が連携することでものが見える。眼球の表面にある「角膜」から入った光が、その奥にある「水晶体」でピントを合わせ、さらに奥の眼底にある網膜で像を結ぶ。眼軸長が長いと、網膜よりも前方で像が結ばれ、近くのものは見えるが、遠くのものが見えにくくなる。

 眼軸長が長いほど近視が進行していることになるが、小中学生約8千人を対象とした調査(21年)では、小学6年生の平均の長さが、すでに成人の平均に達していることがわかった。眼軸長は身長の伸びと同時に長くなりやすいので、さらに近視が進行する危険性がある。東京医科歯科大学病院眼科教授の大野京子医師は警鐘を鳴らす。

「子どものうちに近視が進行すると、将来的に白内障、網膜剥離、緑内障を発症するリスクが高くなります」

 近視が急増、低年齢化しているのはなぜか。

「世界的に認められている原因は二つあります。一つは『近業の増加』、二つめは『屋外活動の低下』です」(大野医師)

 近業とは、目から近い距離で作業をすることだが、近年はパソコンやスマートフォン、ゲーム機などの影響が大きい。小さい画面になるほど、近視の進行に影響するという報告もある。

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近業を減らすこと、屋外活動を増やすこと