■屋内でも明るい光が近視の予防に
屋外活動の低下については、複合的な要因が考えられているが、有力なのは照度の高い光が視力に及ぼす影響だ。
「照度が高い場にいると、網膜の中でドーパミンという神経伝達物質が産生されます。ドーパミンには、眼軸長の伸びを抑制する作用があると言われています」(同)
近視の発症や進行を予防するためには、近業を減らすこと、屋外活動を増やすことがカギとなる。
米国では近業の際の対策として「20−20−20」ルールが普及している。スマホなどの画面を20分見たら画面から目を離し、20フィート(約6メートル)以上離れた先を20秒間見る。
屋外活動については台湾で実施された「1千ルクス以上の光を1日2時間以上浴びている子どもは近視になりにくい」という研究結果に基づき、1日2時間屋外で過ごすことが世界的に推奨されている。屋外は日陰でも1千ルクスあるが、屋内では窓際で800ルクス程度だ。台湾や中国の学校では教室の照度を上げる対策を取り入れている。
「新型コロナウイルスの流行で近視の増加に拍車がかかりましたが、台湾は近視対策を徹底した結果、コロナの流行以後も近視の子どもが増えていません」(同)
■近視の進行を30~50%抑える
近視の進行を予防する治療についても研究が進んでいる。世界的に普及している治療の一つが「オルソケラトロジー」だ。近視を矯正するハードコンタクトレンズを使用する治療のことで、通常のハードコンタクトレンズとは異なるデザインのレンズを睡眠前に装着する。すると角膜の形状が平らになり、ピントが合う位置を後方にずらせる。角膜の形状は一定期間保たれるので、翌朝はレンズを外しても裸眼で過ごせる。レンズの装用をやめれば、角膜の形状は徐々に戻る。
オルソケラトロジーはメガネやコンタクトレンズとは異なり、日中の裸眼視力を向上させるレンズだ。さらに近年は、近視の進行を抑える効果も注目されている。小中学生を対象とした複数の研究では、メガネを使用したグループと比べて、オルソケラトロジーを使用したグループは、近視の進行が30~50%抑えられたといった報告がある。