さらに、こうも言う。
「GPEXEの大きな特徴は1秒間に約20個と、細かくデータをとれることです。それによってサッカーやラグビーで重要な選手の速度や加速、減速を高い精度でつかめます。また、イタリアの運動生理学者とともに開発した消費エネルギーの算出によって練習や試合での消耗をより直観的にとらえられます。位置測定の精度が高いことも大学の先生に評価していただいて、Jリーグでも使われています」
■高校の部活動でも
一方、ほぼサッカーに特化して開発された国産品のデバイスもある。それが「Knows」だ。
こちらは首筋付近の背中につける「計測用センサー」と、わき腹2カ所に装着する「心拍計測用パッド」で構成され、センサーにはGPSのほか加速度計とジャイロを内蔵している。
得られたデータはリアルタイムでiPadに送信され、運動強度を示す心拍数ごとの走行距離や速度帯、時間、スプリント(全力疾走)の回数などが画面に表示されるほか、「根性」というユニークな項目もある。疲労やけがのしやすさの目安となる乳酸参考値も示され、負荷をかけすぎないように練習量の調整ができる。得られるデータは全部で約100項目もあり、表示も自在に変えられる。
さらにKnowsの特筆すべき点は利用料金の安さだ。レンタルの場合、契約年数で料金は異なるが、月々1セット2000円ほどで利用できる。
SOLTILO Knows(大阪府吹田市)の伊藤剛さんは言う。
「この製品は本田圭佑が、日本の育成年代のサッカー選手が世界基準に到達するためには何が必要か、と考えて生まれたものです。日本は部活文化なので、そこで使ってもらえる製品でないと意味がない。そのため、部費でまかなえる料金設定にしています。顧客の約8割が高校で、全国約250チームに使っていただいています」
■Knowsに込められた意味
同社は本田氏が率いるKSKグループの一つで2017年に設立された。
「2008年、本田が名古屋グランパスからオランダのVVVフェンローに移籍したとき、初めてこのようなデバイスと出合いました。しかも、いわゆる街クラブのサッカーでも普通に使われていた。つまり、欧州では選手の能力を測定して、それを日々のトレーニングに生かすのがすでに当たり前だったわけです。そこに日本と世界の育成年代の差を感じた。その差を埋めるために開発したのがKnowsです」(伊藤さん、以下同)
サッカーの現場で使いやすいようにユーザーインターフェースがつくられ、表示項目が絞り込まれた。誰にでもひと目でわかるように日本語表示にもこだわった。
「Knows」というネーミングには「己を知る」という意味が込められている。つまり、Knowsを使うことによって選手自身が練習の内容が自分に合っているのか、能力の向上につながっているのか、客観的な数値から知ることができる。