(写真提供/Knows)
(写真提供/Knows)

 さらに、指導者にとっても自分の指導が本当に選手のためになっているのか、「答え合わせ」ができるという。

「これまでも指導者の方は感覚的な分析はできていたんです。それにもとづいて、この選手は走れていないからダッシュさせようとか、練習を行っていた。そこでさらにKnowsを使うと、感覚としてとらえていたものが、どう数値として表れるのか、『答え合わせ』をするようにわかってくる。すると、自然にその数値を分析して、トレーニングの内容を見直すようになるんです」

 例えば、強度の高い練習を行っていたつもりが、選手に十分な負荷を与えていなかったことも数値で示される。

「スプリントの練習をしていたつもりが、ぜんぜんスプリントが出ていなかったりすることも結構あります。では、走る距離を1メートル延ばしたらどう変わるだろうとか、数値を見ながらワンランク上の練習を目指すようになる」

 その結果は監督やコーチだけでなく、選手にもひと目でわかる。それによって「明確な基準や目標ができる」。練習へのモチベーションも上がる。

■Jリーグ選手がデータを公開

 伊藤さんは、サッカーの指導者からこんな例え話を聞いた。

「これまでのサッカーの場合、練習をして試合を行なっても個人の客観的な数値として結果が返ってこなかった。勉強のようにテストを受けても、その結果が返ってこなかった。ところが、Knowsを使うことによってテスト結果がわかるので、次に向けての予習、復習ができるようになった、と」

 ちなみに、「根性」とは何だろうか?

「本田が『選手から見て、面白いって思えるような項目が欲しい』と言ったんです。『根性』というのは心拍数が高い状態、つまり、きついときですね。そこで、どれだけスプリントができたか、チームのために走れたか、というのを加点式に出しています」

 KnowsはJリーグの川崎フロンターレやサガン鳥栖でも使われている。すばらしいのは「育成選手のためなら」と、得られたデータを公開していることだ。

 部活動でサッカーに励む選手たちがそれを見ることで「自分たちとどこに差があるのか、何が足りないのか」が明確にわかる。さらにその先の世界も見えてくる。

 テクノロジーの導入は着実に日本のサッカーのレベルアップにつながっている。次回W杯を目指す動きは、すでに始まっている。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)