ジャック・アタリさん
ジャック・アタリさん

 フランス、ニュージーランド、韓国、日本、イギリス、ドイツ、スウェーデン、カナダ……。こういった国々は、パンデミックに直面したとき、はるかにうまくやりました。これは主に、民主主義国にとっての成功なのでしょう。 
 たしかにパンデミックによって、人々の自由が損なわれたのは事実です。しかし、奇妙なことに、多くの人々がそれを「良し」としたのです。多くの人が喜んで家に留まったのです。多くの人が自宅で仕事をすることに満足していました。それは、政府が必要な資源を提供すれば、ということです。

 もちろん、政府が在宅勤務のための資源を提供しない国では、自宅で仕事をすることは悲惨でした。そして、多くの発展途上国がそうでした。民主主義国家は、そうではありません。ですから、長い目で見れば、民主主義がパンデミックの勝者である、と言えるのではないでしょうか。

■今起きているのは「利己主義と利他主義の戦い」である

――アタリさんは新型コロナウイルスのパンデミックやロシアのウクライナ侵攻を経て、私たちが将来の世代に害を与えていることに危機感を強めていますね。「命の経済」を強調されていますが、これは幅広い分野にまたがります。例えば、教育、保健、農業、そして持続可能なエネルギーなど、ですね。また、「利他主義」を公的な議論の中心に取り戻すよう呼びかけています。これは、気候変動や自然破壊、健康や教育の軽視といった問題を解決するためですが、あなたが命の経済と利他主義に再び焦点を当てることに興味を持つようになるまでの経緯を教えていただけますか。

 私の文章や著書をよく読んでくださって、ありがとうございます。パンデミックが起きたとき「今は利己主義と利他主義の戦いだ」という記事を書きました。

 利己主義とは、誰かが自分の面倒を見ることです。利他主義とは、「他人が幸福であるかどうか」に関心を持つことです。パンデミックでは、ワクチンを接種することで他人を保護することに、私たちが関心を持っていること、つまり利他主義の重要性を理解していることが示されました。

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