ソ連の崩壊、金融危機、テロの脅威、ドナルド・トランプ米大統領の誕生などを数々的中させてきたジャック・アタリ。そんな彼は「今は利己主義と利他主義の戦いが起こっている」と言います。コロナ後、そしてウクライナ戦争後の世界で、経済はどこへ向かっていくのか。最新刊『2035年の世界地図』(朝日新書)で語った民主主義の未来予想図を、本書から一部を抜粋・再編して大公開します。
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■パンデミックが明らかにした「民主主義」の勝利
――最初に、民主主義についてお聞きします。民主主義はフランスやアメリカのようなその牙城でさえも、攻撃を受けています。ロックダウンなど、人々の自由を制限することでウイルスを封じ込める措置が広範囲でとられ、時には強権的に施行されました。2020年より前には考えられなかったことです。あなたは、コロナ禍が民主主義の基盤を侵食した、と考えていますか。
いいえ、そうは思いません。
パンデミックと現在の状況を見れば、それを乗り越えることに最も成功したのは、民主主義国家であることがわかるでしょう。
中国は、当初も今も最悪です。自国民に嘘をつき、外国人にも嘘をついてきたからです。そのために、パンデミックに発展したのです。もし中国が19年12月に、本当のことを言っていたら、こうならなかったでしょう。中国は自国民に嘘をつきました。どうすべきかの説明もできなかった。今日、パンデミックにおいて、世界で最悪の国の一つとなっています。ロシアもパンデミックに関しては、最悪です。
一方で、民主主義国家に目を向ければ、私たちはずっとましです。このような状況を乗り切るのに最も成功しているのは、世論に対して透明性のある国です。すなわち、「何が起きているのか」「どうあるべきなのか」を表明した国です。そして、それが成功したのです。
最悪のシナリオの例として、ブラジルを挙げることができます。ブラジルは、残念ながら、今のところ本当の民主主義国家ではありません。