「今こそ、「命の経済」へ舵を切るとき」よりジャック・アタリほか著『2035年の世界地図』※Amazonで本の詳細を見る
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 ここで、3つのコンセプトを説明しましょう。

 まず1つ目は、利他主義という概念です。「自分が他人の幸福に関心がある」ということです。

 2つ目は、ポジティブな社会です。ポジティブな社会とは、何でしょうか。それは、次の世代の面倒を見ることが自分たちの利益である、と理解している社会のことです。隣人だけではなく、まだ生まれていない人たちにも利他的であることです。直感的に理解するのは難しいですが、この部屋にいる私たち皆がまだ生まれていない人たちの幸福に関心を持つのです。

 そのためには、日本の例が非常にわかりやすいでしょう。

 仮に将来、生まれてくる人がいなくなったとしましょう。それは、自殺行為です。今、日本に住んでいる人たちは、これから先、ひどい人生を送ることになるのです。ですから、まだ生まれていない人たちの幸福に対する利害に関わるし、彼らが生まれてくることに対する利害に関わるのです。だから、私は「ポジティブな社会」と呼んでいます。つまり、それは多くの世代の利益を大切にしなければならないことを理解している社会のことです。

 3つ目のコンセプトは、あなたが言及した「命の経済」です。この概念は「パンデミックの際に何をすべきか」の重要な要素となるように思います。パンデミックについて見てみると、事の発端は、中国の不潔な卸売市場です。衛生の欠落、粗悪な食べ物、透明性の欠如、民主主義の欠如などがパンデミックを招きました。

 そこで、私は良い分野と悪い分野のリストを作りました。悪い分野とは、私が「死の経済」と呼んでいるもので、すべて「毒」の分野で、気候に災厄をもたらす化石燃料にもつながります。つまり、石油そのものだけではなく、石油に関連するあらゆるもの、自動車・繊維製品の大部分、化学産業の大部分、観光の大部分、飛行機、食品中の人工甘味料に関連する大部分のものなどを指します。その他にも、「毒」にはアルコールなどの様々なものがあります。

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今こそ「命の経済」へと舵を切ろう!