おおた:僕も成熟した文化を持っている学校こそ価値があると思っています。「学校の歴史が10年長ければその分、偏差値1足していい」ってよく言ってるんです。偏差値50と偏差値60の学校があったとして、50のほうが100年歴史が古ければ、同等ぐらいのイメージです。それだけ歴史の価値ってある。

安浪:保護者の皆さん、学校名ありきで選んでいきますが、そうじゃなくどういうふうに生きていってほしいか、家庭の軸がないと学校は選びようがない。意志を持って生きていく子に育ってほしいとか、部活を思い切りやってほしいとか、人間関係でもまれてほしいとか、何が何でも医学部とか。それがなくて学校見学に行くとどこもよく見えちゃう。あとよくあるのが「お得な学校」に入れたいというケース。入り口偏差値は低いけど、出口は高い学校。それはつまり、死ぬほど勉強させるということですよ。

──大学入試改革が迷走し、付属校が人気とも言われています。

矢野:定員の厳格化で、大学受験が以前と比べて入りづらくなっているのは確かだと思います。MARCHの付属校の、2016年度入試と19年度入試の実質倍率の変化を書き出してみると、すべて上がっていました。付属校に入れたほうが親として安心、という考えはあるでしょうね。

おおた:基本的に僕は、子どもの教育は損得勘定で考えるべきではないと思ってる。親のごく一時的な価値観に基づいての損得勘定でしかないですから。付属校を選ぶかどうかは、思春期をどういう環境で過ごすのかを選ぶことでしかないと思ってます。10代の時期を、高校受験もして大学受験もする、という過ごし方をするのか、あるいは高校受験はやらないで大学受験時だけ頑張るのか。もしくは中学受験だけ頑張ってあとは受験はしないのか。それは各ご家庭の教育に対するスタンス次第。

安浪:保護者がなぜ付属校を選ぶかというと、ただ自分が安心したいからなんですよ。それだけ。親が子どもに保険をかけるために大学付属を選ぶケースが非常に多い。中に入ったらそんなに勉強しなくていいんじゃないかと思ってるけど、今は違いますよ。付属校もめちゃくちゃ勉強させます。ダメだったら容赦なく切られて、進級させてもらえない。親が昔の牧歌的な印象を抱いて入れようとするのは間違っています。ただ、大学がある学校はお金があるから、授業も充実しているし設備もある。高校受験・大学受験がないから、やりたいことをずっと突き詰めてやれるよさもあります。

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