ますます熱を帯びる中高一貫校や大学付属校などの中学受験。親として、どう理解すべきなのか。AERA 2020年1月27日号で、教育の「プロ」、おおたとしまささん、安浪京子さん、矢野耕平さんが、直球で語り合った。
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──大学入試制度の改革との関連から、中高一貫校の人気が上がっています。
矢野耕平(以下、矢野):中高一貫校が大学受験で有利だとするなら、それは小学生のときに算国理社、幅広い範囲で知識を仕入れたことが財産になるから。「高校受験生は中学受験生に勝てない」と、ある中高一貫校の先生から聞いたことがあります。それは中学受験で理社をやった経験が大きいと。高校入試は英数国しかやらない子が入ってくるんですが、高2、高3と上がっていくと一気に中学受験組は高校受験組を突きはなしていく。その原動力になるのは理科社会だと。
安浪京子(以下、安浪):確かに中高一貫校には戦略的なカリキュラムがあって、予備校的な側面もあります。大学入試のみ切り取れば有利でしょう。でも学校選びってそれだけじゃない。人間形成や文化、どういう人間を育てる学校なのか。社会に出てからのことまで考えれば切り口は変わるかなと思います。
おおたとしまさ(以下、おおた):一部の私立の中高一貫校には大学入試から逆算したようなカリキュラムを打ち出しているところもありますね。僕は正直そこには魅力を感じてないです。大学入試のために中高一貫校にと思ってるなら、「やめておけば」と思いますね。そういう損得勘定で中高一貫とか中学受験をするっていうのはピンとこない。動機と手段の次元がずれている。中高一貫校が大学入試に有利なのだとすれば、考えられる理由は、特に中学のうちにディスカッションとかフィールドワークとか豊かな学びができること。その土台が最後の1年、受験勉強のときに教科書的な知識と結びつきやすいから、有利になるんだと思う。
安浪:私も予備校機能を持つ学校はそんなに魅力を感じていなくて。言ってしまえば偏差値上昇中のリニューアル共学校ですよね。その予備校学校に行ったら予備校は行かなくて済むかって言うと、結局予備校も行くんですよ。だから本当に勉強一色の学校生活になる。「俺の青春マジなかった」という卒業生もいます。それでも本人が満足するなら良いと思いますが。お金を払って私立に行かせるのは、そこには文化があるからだと思う。キリスト教であれ仏教であれ宗教がある学校は強いなと思いますね。ブレないから。