延期が決定した大学入学共通テストの英語民間試験。巨大な利権の創出ともいえる民間試験導入にもかかわらず、その経緯が不透明であることが問題視されている。実施予定だった試験の一つGTECを開発したベネッセと、導入に関わった政官財学のメンバーとの密接な関わりが浮かび上がった。AERA 2019年11月18日号に掲載された記事を紹介する。
* * *
「営利を追求する民間企業に入学テストを丸投げすると、教育の機会均等が確保できないのではないか」
11月6日、共産党の塩川鉄也氏が衆院予算委員会で問いただした。「学校に関して市場原理や民営化、民間の考え方を過度に入れることは問題だ」と問うたのは、立憲民主党の大串博志氏だ。
毎年約55万人が受験する大学入試センター試験に代わり、来年度から始まる大学入学共通テストで導入予定だった英語民間試験が延期された。早くから制度設計の不備が指摘されていながら具体策を講じられなかった文部科学省が、土壇場で混乱回避を優先した形だ。
この日の国会では、巨大な利権の創出ともいえる民間試験導入の経緯が不透明であることが指摘され、非公開だった文科省の議事録も公開される見通しになった。
安倍内閣の主要人物が旗振り役となり、教育現場を舞台に民間企業への利益誘導を図る構図は「森友・加計学園問題」とそっくりで、関係者の間で第3の疑惑と目されてきた。
全国約5200の国公私立高が参加する「全国高等学校長協会(全高長)」元会長で、東京都立八王子東高校で統括校長を務める宮本久也(ひさや)氏は、こう嘆息した。
「かつては教育産業界にあって、現場の教員と苦楽を共にし、教育の未来を語り合う存在だったベネッセも、今回は越えてはならない一線を越えてしまったように思います」
無理もない。ベネッセコーポレーション(本社・岡山市)を核とするベネッセグループには、今回の英語民間試験の導入経緯に密接に関わってきた政官財学のメンバーが大勢ぶら下がっている。教育行政に影響力を持っていたことは疑う余地がない。