ベネッセの開発した試験GTECは、受験生が最も集中する大本命とみられていた。全国47都道府県で受験できるのは実用英語技能検定(英検S‐CBT)とGTECだけ。加えてベネッセの営業マンは全国津々浦々の学校現場に入り込んで模擬試験を行うなど密接な関係を築いてきた実績があるからだ。

 ベネッセは、株主・投資家向けのビジネスレポートで、2018年度に162億円だった営業利益を20年度には350億円、22年度には600億円に引き上げる目標値を設定している。この中で「国内教育」領域の柱に「教育・入試改革を機会点としたさらなる成長」を挙げ、英語4技能教材の開発を重視することを明言。実際、グループ会社が大学入学共通テストで来年から導入の決まった国語記述式試験の採点業務を今年8月、61億6千万円で落札した。

 英語民間試験は高校3年生の4月から12月までの間に2回受けることが可能で、仮に共通テストの受験者の半数がGTECを選択して2回受ければ延べ約55万人が受験者になる。ベネッセが発表した検定料は税込み6820円で、それだけで数十億円規模の収入だ。さらに受験生向けの対策講座や参考書などの商品開発も加われば「教育・入試改革を機会点としたさらなる成長」という皮算用をしていたのだろうか。

 もちろん、英語民間試験の導入は、決してベネッセの「成長」ありきでスタートしたわけではない。民主党政権時代の12年6月、文科省が「大学改革実行プラン」として入試におけるTOEFL・TOEICの活用・促進を発表。同年8月に当時の平野博文文科相が「中央教育審議会」(中教審)に「大学入学者選抜の改善をはじめとする高等学校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策について」を諮問した。

 以降は当初有力視されていたTOEFLだけでなく、8種類の検定が採用された。15年1月16日、下村博文文科相(当時)が「高大接続改革実行プラン」として20年度スタートの新テスト導入の工程表を決定すると、導入の既成事実化が急速に進んだ。しかも、重要な部分はブラックボックスの中で決められていった。(編集部・大平誠)

AERA 2019年11月18日号より抜粋