熱い応援を続ける阪神ファン(c)朝日新聞社
熱い応援を続ける阪神ファン(c)朝日新聞社

 セ・リーグのクライマックスシリーズ・ファイナルステージで激突中の、阪神タイガースと読売ジャイアンツ。両チームともにファンの応援に熱がこもるが、そんな中、「阪神ファンも、ずいぶん変わってしまったな……」と複雑な思いで見つめる、昔からの虎党もいる。

 阪神ファンで知られる朝日放送テレビのアナウンサー、道上洋三さん(76)は、最近の阪神ファンの「ビールの買い方」に眉をひそめる。

「ボール2、ストライク2で、セカンドにランナーがいて、この1球で決まるかもしれない。次が勝負球。そんなときに、おっちゃんが『おーい!ビール!』と言って、女の子が来て、目の前に立たれるとねえ。タイミングを考えろよ、と」

 幼稚園のころから阪神ファンだという東京都内の会社員の男性(52)も、阪神の攻撃中にもかかわらず平気でビールを買うファンを見て目を疑ったという。

「一生懸命応援していたら、ビール買う暇なんてないですよ。で、攻撃で点をとったら、その回の終了後に『よっしゃー』という感じでみんなガバーっと買う。ご祝儀代わりにね。それで相手の攻撃は見ずに、もう飲んだり食ったり(笑)。相手の攻撃は休憩時間みたいなもんですよ。とくに内野席はね」

 男性は大学時代、甲子園でビールの売り子のアルバイトをしていたという。

「そもそも阪神が攻撃している最中に、阪神側で、売り子の女の子がビールを『売りに来ること』自体がけっこう非常識でびっくりです。こっちは試合見てるのに、売りに来るなら相手の攻撃の時に売りに来いと。試合が見えないから」

 男性は、阪神ファンの「変わり果てた姿」にため息をつく。

「先月、神宮球場でびっくりしたのですが、ヤクルトファンと一緒に東京音頭を踊っているタイガースファンがいたんです。しかもそれ用の黄色い傘をもう用意して、踊る気満々で持っている。試合というよりもイベントを楽しみに来ているという感じですよね……」

 そんな声に反発するファンもいる。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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