近年、集中豪雨による浸水など、多くの地域で水害が起こっている。とりわけ危険性が高いと指摘されているのが、大河川の下流域にある大都市圏だ。大都市の地下鉄や地上駅に潜むリスクについて取材した。
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大都市の地下空間に網の目のように張り巡らされた地下鉄には、水が流れ込む場所は無数にある。日本の下水道の排水機能は、毎時50ミリの雨を想定。コンクリートやアスファルトに覆われた都市部では、これ以上の雨が降ると排水が追いつかなくなり、水は地下空間に一気に流れ込む。
鉄道と災害の問題に詳しく、『関東大震災と鉄道』(新潮社)などの著書があるフリーライターの内田宗治さんが、各自治体が公表しているハザードマップなどを使い、東京、横浜、名古屋、大阪の浸水リスクがある地下駅や地上駅、駅間を独自に集計した。
東京は国土交通省が作成した「荒川水系荒川洪水浸水想定区域図」(16年)などをベースに、地下駅の地上部分の浸水深を調べた。その結果、計68の地下駅に0.5メートル以上の浸水リスクがあるとわかった。最も危険な駅は、東京メトロ千代田線やJR常磐線各駅停車のホームが地下にある北千住駅(足立区)で、浸水深は5メートル以上。建物の2階まで覆う水が一気に地下に流れ込むリスクがある。次いで、地上の浸水深が3~5メートルになる地下駅は町屋駅(荒川区)、入谷駅(台東区)、新御徒町駅(同)、西大島駅(江東区)など13駅。0.5~3メートルの浸水深になる地下駅も、50駅近くある。東京23区の東側にある地下駅付近は、軒並み浸水する危険性がある。
「これだけ多くの駅付近が浸水するのは、荒川や江戸川といった大河川に近く、ゼロメートル地帯が広がっているためです」
地下鉄も対策を急ぐ。東京メトロでは、計1千近くある駅出入り口のうち、低地などにある370カ所に水害時は出入り口を強化ガラスで覆う工事を進め、昨年は路面にある全955カ所の換気口に遠隔操作で閉鎖できる浸水防止機の整備を完了した。