前出のトレイムでは、長期インターンなど経験を積んだ学生に絞った新卒紹介サービスをこの夏から開始する予定だ。終身雇用が崩壊した今、多くの企業は新入社員をゼロから育てる余裕がない。入社直後から「即戦力」となり、雇用期間中に自社にきちんと利益をもたらしてくれる人材が理想とされる。その点で、長期インターン経験者は魅力的に映ると目論む。

 ところで、これだけインターンへの関心が高まる中で、先月末、「採用直結インターンの禁止を政府が経済界に要請へ」(2月26日、朝日新聞デジタル)という報道が話題になった。ネット上では「意味がわからない」「なぜそうなる?」など批判的なコメントが目立った。

 選考過程に数日間のインターンを組み入れているサイバーエージェントの石田さんも、

「企業と学生がお互いのミスマッチを防ぐ上で、インターンは非常に重要なプロセスなのに」

 と困惑を隠さない。

 そもそもこんなにも反発を招く理由は、「採用直結インターン」という言葉が定義されていないからだ。実は政府は2017年にも「インターンシップは就業体験を伴うことが必要」だとして、ワンデーインターンシップなど実質的に企業説明会になっているものについては「インターンシップ」と称さず、「セミナー」や「企業見学会」など別の名称を使うように要請している。そこでは「採用直結」という言葉は使われていないし、今回も同様の要請をするとみられる。

 就活に詳しい法政大学キャリアデザイン学部の田中研之輔教授によれば、表のインターンシップの4類型のうち、就業体験型は政府自らが旗振りをし、推進しているものだから、これは禁止の対象にはなり得ない。政府が問題視しているのは、採用広報解禁日以前に行われる「セミナー型」と就業体験を伴わない「プロジェクト型」。政府や大学からすれば、「人手不足の中で採用が早期化し、『インターン』の名の下に実質的な選考が行われているのは放置できない。学業の妨げにもなるので、そこに歯止めをかけたい」というのが意図だという。

 しかし、セミナー型について「採用広報解禁日以前に行うのは禁止」といっても罰則規定がない限り実効性は乏しいし、そもそも大学3年の3月以前に学生が会社のことを知る機会を奪っていいのかという問題もある。プロジェクト型についても何をもって就業体験とするかなど線引きは難しい。

 だとすればインターンと採用をどう位置付け、どんなスケジュールで進めるのが望ましいのか。田中教授が提唱するのは、1、2年で長期インターンを2、3社経験→その後3年の夏に実質的な選考につながるものも含めてインターンを経験→最終的な選考は、大学の授業の妨げにならないように、春休みの2、3月に実施→大学4年で内定先や他社でもう一度インターンをするというパターン。21年卒以降の学生を混乱に陥れないためにも、言葉の整理も含めて早急な議論が必要だろう。(編集部・石臥薫子)

AERA 2019年3月25日号より抜粋

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