ベスト・ファーザー賞受賞など、プロレス界の内外で新天地を開拓してきたプロレスラーの棚橋弘至さんがAERAに登場。日本のプロレス普及にかける想いを聞いた。
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3月6日、東京・大田区総合体育館。47年前のこの日この場所で旗揚げされた新日本プロレス。その記念大会が開催されていた。肉体がぶつかりあう音に満場の観客の歓声、悲鳴がかぶさる。
2000年代前半の団体の低迷期、それまではなかったプロモーション活動やファンサービスを展開。現在もブログやSNSを駆使し、熱心に発信する。若者に人気のファッションに身を包み、イクメンとしてベスト・ファーザー賞を受賞するなど、従来のプロレスラーのイメージを変えてきた。誰もが認めるプロレス人気復活の立役者だ。
昨年5月、自身もプロレスファンであり、日本コカ・コーラ副社長、タカラトミー社長を歴任したハロルド・メイが新日本プロレスの社長に就任。クリエイティブでドラマチックな日本のプロレスは海外の多くのファンも魅了している。
「日本のプロレスはアメリカのように100%エンターテインメントではなく競技の部分とエンターテインメントのバランスがある。英語の実況解説もやっていますが、なくても伝わるプロレスの競技性がいいのだろうと思います」
来たる4月6日の米ニューヨークの格闘技の殿堂、マディソン・スクエア・ガーデン(MSG)での大会。チケットは即日完売した。
「実感がないんです。20年前、道場に入って『練習生の棚橋です、よろしくお願いします』と言った一歩がMSGにつながっているとは思っていなかったです」
それでもまだプロレスはマイノリティーであり、それゆえの強さやファン同士の結束力の固さがあると言う。
「そのマイノリティー性はすごく持っていたい。でも今こうして取り上げてもらうことで隠れていたマイノリティーたちが表に出てきてくれるんです。いろいろな所から今行け! という援軍が現れてくれているなと感じます」
(編集部・小柳暁子)
※AERA 2019年3月18日号