ノルディックスキーのジャンプ週間で、史上3人目の4戦全勝で総合優勝を決めた。彗星のごとく現れた新エースはどのような人物なのか。
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口数が少なく、何事にも物おじしない。
日本スキー・ジャンプ界に彗星のごとく現れた男子の新エース、小林陵侑(22)は、いわゆる「天才肌」だ。
「はい」「そうっすね」
報道陣によく発する言葉は、この二言。心境が表情に出ることはほとんどなく、報道陣泣かせの選手だ。しかし、ぶっきらぼうなわけではない。人前で話すのが得意ではないだけ。ヘルメットなどのお下がりをもらって使っている同じジャンプ選手の弟の龍尚(17)は、「多くは話さないけれど、ひと言、ひと言を良くかんで理解すれば、ためになることを言っている」という。
むしろ人なつっこい笑顔で、周囲からかわいがられている。姉の諭果(24)によれば、ともに昨年2月の平昌冬季五輪に出場した兄の潤志郎(27)と同様にマイペースな性格だが、「お兄ちゃんはすごくよく寝るけれど、弟は寝るより遊んでいる方が楽しいみたい」
愛車はローンで買った中古のポルシェ。両側を刈り上げ、長い前髪を七三分けにしたり、真ん中分けにしてみたり。ファッションにも気を使う、音楽好きの若者だ。
岩手県八幡平市出身。潤志郎の影響で、4人きょうだい全員がジャンプを始めた。スキー距離の元選手で指導者でもある父の宏典さん(54)は、「陵侑が4人の中で最も感覚に優れている」と認める。
5歳でスキーを始め、小学校入学前に小さな台で初めて飛んだ。そのとき、きちんと踏み切って上に飛び、周りを驚かせたという。
身長173センチ、体重60キロ。ジャンパー特有の細身の体形で、身体能力の高さは小さい頃から折り紙付きだった。
将来有望なスポーツ選手を探して育てる地元岩手県の「タレント発掘・育成事業」に小学5年から中学3年まで参加。様々なスポーツに挑戦しながら、どの競技に向いているかを見極める取り組みを経験した。瞬発力があり、レスリングと、タックルの代わりに腰のヒモを奪うタグラグビーの関係者から誘われたほどだ。