梅田悟司(うめだ・さとし)/1979年生まれ。コピーライター。電通時代に手掛けた缶コーヒー「世界は誰かの仕事でできている。」などで知られる(撮影/写真部・片山菜緒子)
梅田悟司(うめだ・さとし)/1979年生まれ。コピーライター。電通時代に手掛けた缶コーヒー「世界は誰かの仕事でできている。」などで知られる(撮影/写真部・片山菜緒子)
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「世界は誰かの仕事でできている。」などで知られるコピーライターの梅田悟司さんが開催する「表現力と思考力」の講演会が親たちに人気だ。二つの力の必要性を感じる背景とは?

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 小学6年の息子を持ち、起業家でもある今西由加さん(45)は、子どもが幼いころから、思いを自分の言葉で説明できるよう、働きかけをしてきた。「何かをしたい」と言われたら、必ず「どうして?」と尋ねる。意識していたのは、自分の意見を筋道立ててロジカルに話をすることができる子ども。そして、人の意見をきちんと受け入れられる子ども、だ。

 課題を見つけ、自分の思いを自分の言葉で伝え、他者と意見を交わす。その一連のプロセスの重要性を感じ、週に1回、デザイン思考のスクールにも通わせている。息子は、小学1年からクラウドファンディングも始めた。

「何かをやりたい、と思ったときに、自分の言葉でプレゼンをし、味方につける。これは“頭がいい”ということよりも重要なことではないかな、と思う。実際、幼い頃から続けていると少しずつ自分の頭で考えられるようになった。訓練であり、鍛えられるものなのだな、と実感しています」(今西さん)

 子どもに表現力、思考力をつけたいと考える親たちはみな、身をもってその必要性を感じていた。すべては、これからの時代を生き抜くため。

 けれど、もう一つ。思考力、表現力を重視する背景には、いまが教育改革の過渡期にある、という現実がある。2020年から始まる大学入試改革に伴い、中学受験の問題の性質も変わってきているのだ。

「過去の問題傾向から応用性を深め、もう1段階、2段階、掘り下げて考えさせる問題なども増えているように感じます」

 講演会に参加した、小学3年の娘を持つ山田勝彦さんはそう語る。

 コピーライターの梅田悟司さんも「受験と就活という2大イベントに対して、自分のなかの考えを整理したい、と講演会にいらっしゃる方は多い」と話す。

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