山口拓也さん(右端)と「まるも」メンバーたち。「田舎フリーランス養成講座」の受講者はのべ300人を超え、キャンセル待ちも出るほどの人気だ(撮影/伊ヶ崎忍)
山口拓也さん(右端)と「まるも」メンバーたち。「田舎フリーランス養成講座」の受講者はのべ300人を超え、キャンセル待ちも出るほどの人気だ(撮影/伊ヶ崎忍)

 人口1500の街に、3年で若者50 人超が移り住み、突如「フリーランスの聖地」になっている──。そんな噂を聞き千葉県富津市金谷を訪ねた。

「聖地」の中心となっているコワーキングスペース&シェアハウス「まるも」で出迎えてくれたのは創設者の山口拓也さん(29)。早稲田大学を卒業後、いきなりフリーランスになった山口さんは12年、後輩に誘われてたまたまこの街にやってきた。当初の滞在予定は3カ月だったが、始めたばかりのウェブサイト制作などの仕事がうまくいって、1年で月収は100万円を超え、法人化することに。

「田舎でもフリーランスとしてやっていけるとわかって、居続けようかなと。その頃、近くのシェアハウスが運営者を探していると聞き、手を挙げました」

 それが「まるも」の始まりだ。やがて、一緒に働ける人がいればという思いから「田舎フリーランス養成講座」(通称いなフリ)を始めた。講座は1カ月、金谷のシェアハウスで生活しながら、ウェブデザインやブログ運営、プログラミングなどのスキルを学ぶというもの。費用は受講料と家賃をあわせ約17万円。

「有名ブロガーなどが講師なので、実践的で楽しい。終わる頃には案件も獲得して収入を得られるということで人気が出ました」(山口さん)

 そして、この「いなフリ」受講者の中から、金谷への移住者が続々と現れた。ハンドル名「山田チャーハン」さん(22)もその一人で、青森県の大学を卒業する直前に「いなフリ」を受講し、そのまま金谷に来たという。

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