就職活動での「学歴フィルター」の存在をご存じだろうか? 表向きは学歴不問と称しているが、その実、エントリーさえできない大学差別だ。背景に何があるのだろうか。
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情報企業に勤める都内在住の女性(26)は、愛知県の私立大学出身だ。就職活動では大手自動車系列メーカーも視野に入れていた。ある日、その会社の説明会に申し込もうとしたが、すでに締め切られていた。
「でも、1週間後ぐらいに名古屋大学の友人にその話をしたら、『え、まだ申し込めたよ』と言われて、びっくり。『学歴フィルター』って、本当にあるんだなと思い知らされました」
ここ数年、一部企業で過去に横行した「大学差別」が復活していると、就活生の間でささやかれている。それは「学歴フィルター」と呼ばれ、公然の秘密として受け止められている。『学歴フィルター』の著者である就職コンサルタントの福島直樹さんによると、2010年前後から使われ始めた言葉だという。
「これまでも大学名での選別はありましたが、企業はSNSによる“炎上”を気にして、今は水面下で行われるようになったのです」(福島さん)
就職活動で新卒生に広く門戸が開かれたのは、実はここ20年ほどのことだ。1980年代までは、企業が大学を指定して求人を行う「指定校制度」などが一般的で、指定外の大学の学生はエントリーすらできなかった。だが、学歴差別との批判の声もあり、91年にソニーが「学校名不問採用」を実施。多くの企業が追随した。2000年以降になると、就職ポータルサイト「リクナビ」などが普及し、エントリーシート(ES)を採用する企業が増えて、「一括エントリー」も可能となったことから、表向きは全ての企業に応募できる仕組みが整った。
だが、「学歴フィルター」は水面下に潜って残り続けた。11年7月には大手機器メーカーが事務系総合職向けの会社説明会(セミナー)のウェブ予約で「事務系(東京大学の方)」など、学校別に申し込み画面を設定。設定のない大学の学生も申し込みはできたが設定大学よりも早く「満席」になったために、批判を浴びた。15年6月には、ある金融機関が“炎上”した。セミナーに申し込んで「満席」とされた中堅大学の学生が、「東京大学」として再度入力すると「予約」の画面が現れる一部始終をSNSにアップしたためだ。両社とも本誌取材に学歴フィルターの存在を否定しているが、福島さんは言う。