高い収益を出し、好調の波に乗っている総合商社。一方で取り組むのが「働き方改革」だ。かつて「ザ・日本企業」の典型だった商社が踏み切った改革とは。
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姉崎一樹さん(34)は大学院に通う妻・沙緒里さん(34)、娘の純ちゃん(3)との3人暮らし。午前8時過ぎに純ちゃんを保育園へ送り、家に戻って業務をスタート。メールや資料を読み込み、昼食を挟んで午後は電話での会議や打ち合わせに充てる。午後4時ごろに沙緒里さんと純ちゃんが帰ってくると、いったん仕事を切り上げ、家事や家族の時間を過ごす。純ちゃんが眠ったあとは、残りの作業を再開したり、欧州との電話会議を持ったりする。
午後4時以降も静かな環境で仕事をする必要がある時は、近くのサテライトオフィスに場所を移して業務を続けるそうだ。
姉崎さんは住友商事の海外インフラ事業部で欧州企業への投資を担当する。同社ではこの秋から、原則、国内勤務の全社員を対象にテレワークを導入する。1週間のうち、所定労働時間の2日相当分までを、自宅やサテライトオフィスで働けるようにする制度で、育児や介護など理由を問わず利用できる。勤務時間を変更できるフレックス制など別の制度と併せて、働く場所と時間の選択肢が大きく広がる。
昨年11~12月と今年4~6月に実施したトライアルには、延べ約3千人の社員が参加。冒頭の姉崎さんの一日は、その様子を再現したものだ。全社的に「無駄な移動時間・待機時間が減った」など好意的な意見が多かったという。姉崎さんがその日々を振り返る。
「テレワークをしている日は夕方以降を家族で過ごせるので、子育てにもじっくり関われて、生活の充実度が格段に増します」
商社といえば激務。世界中で事業を展開する、すなわち日本で現地時間に合わせて24時間ずっと仕事を続ける──そんなイメージが色濃く残っていた。社員が朝も夜も休日もなく長時間働き、世界を席巻した「ザ・日本企業」の典型だ。「ショーシャ」は海外で恐れられた。