多くの子どもにとって避けては通れない受験勉強。小学生で経験するか、中学生で経験するか──。それぞれに長所も短所もある(撮影/篠塚ようこ)
多くの子どもにとって避けては通れない受験勉強。小学生で経験するか、中学生で経験するか──。それぞれに長所も短所もある(撮影/篠塚ようこ)
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【進学レーダー編集長】井上修さん(50)/1967年生まれ。愛媛県出身。横浜国立大学卒業後、日能研入社。情報系業務一筋。日能研イベント企画推進本部ディレクター兼務(撮影/写真部・大野洋介)
【進学レーダー編集長】井上修さん(50)/1967年生まれ。愛媛県出身。横浜国立大学卒業後、日能研入社。情報系業務一筋。日能研イベント企画推進本部ディレクター兼務(撮影/写真部・大野洋介)
【早稲田アカデミー 高校受験部長】酒井和寿さん(47)/1970年生まれ。栃木県出身。上席専門職。高校受験課長を経て現職。西日暮里校で開成高校クラスを担当する(撮影/写真部・大野洋介)
【早稲田アカデミー 高校受験部長】酒井和寿さん(47)/1970年生まれ。栃木県出身。上席専門職。高校受験課長を経て現職。西日暮里校で開成高校クラスを担当する(撮影/写真部・大野洋介)

 中学受験大手・日能研グループのみくに出版が発行する中学受験専門誌「進学レーダー」の井上修編集長と、最難関高校受験で圧倒的な合格実績を持つ進学塾「早稲田アカデミー」の酒井和寿高校受験部長。中学受験、高校受験に精通した二人が、中学受験の長所、短所などを語り合った。

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──まず、中学受験と高校受験、それぞれの位置づけについて教えてください。

井上:2018年の調査では、東京、神奈川、千葉、埼玉の中学受験率は20.1%です。特に東京の中学受験率は29.8%と高い。中学受験が一般化した世代が親になり、ますます関心が広がっています。

 もう一つの傾向としては、私立中学受験に失敗して公立中学に進む生徒の割合が、ここ20年ほどで急減しています。日能研で見ると、かつては高校受験でリベンジするというタイプもいましたが、今は第1志望校に受からなくても、9割以上はどこかしらの私立中高一貫校に入学します。保護者の大半は、入り口の偏差値は関係なく、6年の間にきちんと育ててくれる学校を見つけようという考え方です。

酒井:逆に、公立の中高一貫校に不合格だった場合は、高校受験でリベンジする人が増えてきています。また、早稲田アカデミーでは中学受験を経験した生徒は全体の2割弱。公立小学校から公立中学校に進み、初めて受験に挑む生徒が中心です。中学受験はご家庭の経済力などを理由に誰もができるわけではありませんが、高校受験はある意味、誰もが経験する類いのものです。

──中学受験をするメリットは何でしょうか?

井上:中高一貫校に入れば高校受験の必要がなく、進路選びに時間をかけることができます。大学が多様化し、昔のように偏差値で学校の価値が並んでいるわけではなく、教育内容などをきちんと見極める時間が必要です。たとえば立教大学の中でも人気の経営学部は、偏差値が早慶(早稲田大学、慶應大学)レベルになるなど、今後ますます大学ではなく、学部・学科で進学先を選ぶようになる。

──時間的余裕が中だるみを生むという指摘もありますが。

井上:中高一貫校の今のトレンドは、中学3年生の過ごし方です。中3で大学訪問に行く学校もあれば、長期間の海外研修に出かける学校もある。大事なのは、キャリアガイダンスです。いったい自分は何がしたいのか、そのためには何を学ぶべきか。6年間の学びを通して、学科、学部名から、最後に大学を選んでいく。中だるみはありません。

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