小川はライアンを参考にする前はロサンゼルス・ドジャースなどで活躍した野茂英雄の「トルネード投法」に近いフォームで投げていて、その後の「ライアン投法」も実際はトルネードとのハイブリッドと言える。脚を高く上げるまではライアンだが、その後にグッとタメをつくり、上から投げ込むスタイルは野茂を思わせる。相手打者にとってタイミングの取りづらいそのフォームをより効果的にするために2段モーションを取り入れたのだが、実はやや無理をしているところがあったのだという。
「2段(モーション)って、ちょっと自分で頑張って余計に力を入れてるところがあったんです。(ライアン投法は)自分の本来の投球フォームでもありますし、原点に立ち返って体をしっかり大きく使おうっていうところで。それに脚を(高く)上げたほうがしっかり体重が乗るし、(投球の際に)体も開かないんです」
“原点”に立ち返ったフォームから投げ込まれるボールは今シーズン、勢いを増したように見える。自信のあるストレートを軸にドンドンとストライクゾーンを攻めるから、フォアボールも少ない。昨季の9イニング平均1.88という四球率は小川のキャリアでもベストに近いものだったが、今季はここまでわずか0.95。だから球数も抑えることができる。
開幕戦のお立ち台で、あらためて今季の目標を問われた小川は「チームとしては3連覇、日本一(奪回)がかかってますし、その中心として15勝……なかなか難しいですけど、200イニングも目指して毎試合毎試合、長いイニングを投げれるように頑張っていきます」と答えている。勝利数は打線との兼ね合いにも左右されるが、長いイニングを投げることができれば白星が付く可能性も高まるはずだ。
今季の小川はここまで1勝1敗、通算では93勝74敗で、あと7勝で2011年の石川雅規に次いで球団史上6人目の100勝に到達する。ヤクルトは現在、8勝6敗でセ・リーグ2位タイだが「試合をつくってチームが勝てばいい」としながらも「それでも勝ち星っていうのは、やっぱり先発ピッチャーにとってとんでもなく大きい薬になる」という小川がエースとして勝ち星を積み重ねていけば、チームもドンドン勢いに乗っていくことだろう。
ただし、そのためには“援護”が不可欠。ここまでリーグワーストのチーム打率.182、1試合平均2.5得点と苦しむ打線の奮起にも期待したいところだ。(文中の今季成績は4月19日終了時点)
(文・菊田康彦)
●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。