投手、野手ともに豊作と言われている今年のドラフト候補。大学生の多くは春のリーグ戦がスタートしており、改めてレベルの高さを示している。一方で高校生はセンバツ高校野球で升田早人(光・投手)などがアピールしたが、全体的には昨年の秋から大きく変わったという選手は少なかった印象だ。しかし、高校生の場合は春から夏にかけて急成長するケースは少なくない。
近年の投手でまず名前が挙がるのが2016年の今井達也(作新学院→西武1位)だ。下級生の頃から140キロを超えるスピードをマークしていたものの、当時はコントロールが不安定で、2年夏の甲子園はベンチ外となり、秋の県大会も自身の暴投で敗れている。3年春の県大会はチームの底上げという意味もあって入江大生(現・DeNA)が主戦を務め、今井の登板機会はなかった。この時点では今井の名前がドラフト候補として挙がっていなかったのも当然だろう。
夏の栃木大会で150キロ近いスピードを記録してようやく取り上げられるようになったものの、甲子園大会の開幕前には寺島成輝(履正社→ヤクルト1位)、藤平尚真(横浜→楽天1位)、高橋昂也(花咲徳栄→広島2位)が“高校生ビッグ3”と言われており、今井の序列はその下という位置づけだった。そんな今井の評価を大きく変えたのが甲子園大会でのピッチングだ。初戦でいきなり150キロを超えるスピードをマークして13奪三振完封勝利をあげると、その後も最後までボールの勢いは落ちることなく5試合に先発して4完投の大活躍でチームを54年ぶりの優勝に導いて見せたのだ。
大会後にはU18侍ジャパンにも選出され、大学日本代表との壮行試合では2回を投げて4者連続を含む5奪三振と好投。一躍高校生の目玉の1人となり、単独指名ではあったものの、西武から1位指名を受けてプロ入りした。この年は堀瑞輝(広島新庄→日本ハム1位)もU18アジア選手権での好投で評価を上げて“外れ外れ”ではありながらも1位で指名されているが、ここまで最後の夏に評価を上げた選手が揃う年も珍しいだろう。